敏腕専務はウブな彼女を染め上げたい~イジワルな彼の甘い言いつけ~
そちらを見やれば、緩い巻き髪のセレブカジュアルなパンツスタイルの女性が、愛想を振りまきながらこちらへ向かってくる。

彼女の登場で、周囲の社員……特に男性陣がしまりのない顔で浮き立っている。

パリコレモデルのように颯爽と歩いてきた彼女は、俺を見てパッと顔を輝かせた。


「あっ、生巳~!」


げ、と思ったときにはもう、勢いよくガバッと抱きつかれていた。後ろによろけて再び社長室に戻る。

この距離感のおかしな女性は、七岡(ななおか) 慧子(けいこ)。二年前までパーフェクト・マネジメントで調理師として働いていた人物だ。

現在は知る人ぞ知る料理研究家として活躍していて、スタイル抜群でエキゾチックな顔立ちから、男性にかなりの人気らしい。

七岡さんは俺と同い年であり、さらにオープンでサバサバした性格なので、いつもこんな調子で絡まれるのだ。そのせいで、俺も自然に素が出てしまう。

俺だけじゃなく誰に対してもフレンドリーで、それはいいことだが、挨拶は普通に日本流にしてほしい。

彼女はすぐに身体を離したものの、俺の肩に手を置いたまま、やはり近い距離で話しだす。
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