敏腕専務はウブな彼女を染め上げたい~イジワルな彼の甘い言いつけ~
私のことも、入社当時に〝はなの〟ではなく〝かの〟と呼び間違える人が何人かいたことから、そのままあだ名として皆に呼ばれるようになった。

わが社はかなり独特な社風で、平社員だろうが役職者だろうが、関係なくあだ名で呼び合っているのだ。コミュニケーションを活発にするために。

エイミーは誰に対してもフレンドリーだけれど、私が一番親しくしているのは彼女だ。話していて楽しいし、悩み事も明るく受け止めてもらえるので気がラクになる。

今も、昨日母から電話があり、『東京での暮らしも堪能したでしょう。そろそろ帰ってきてお見合いをしなさい』と言われたことについて相談しているところ。

エイミーはオシャレなネイルが施された指でサンドイッチをつまみ、怪訝そうに眉をひそめる。


「お見合いって、なんで急に?」

「前から『いい人いないの?』とは言われてて、ずっとはぐらかしてたから痺れを切らしたんだと思う。たぶん早く結婚させて、できることなら地元にいてもらって安心したいんだよ」


両親にしてみたら、親元を離れてすでに四年近く働いたのだから好きなことはやっただろうし、恋人もいないならこれ以上東京にいる必要はないのでは、という考えらしい。
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