彼女は突然、僕の前に現れた。
 敦は検索で色々なものを調べた。
 「青い蝶…幸せ…うーん…」
 悩んだ末、敦が選んだのは…。
 「ユリ、ってどうだ?」
 「ユリ…ですか?」
 「うん、幸せの青い蝶ユリシスから取ってユリ。ダメかな?」
 敦がそう聞くとユリはふるふる震え出した。
 敦に不安が募る。
 「すっごく気に入りました!幸せの青い蝶…ふふ、ありがとうございます敦さん!」
 少女もといユリは満面の笑みで喜んだ。
 「ほっ、良かった。気に入ってくれて」
 「そんなに不安だったんですか?」
 「うんだってユリ、黙っちゃうし」
 「ふふ、すごく気に入りました!私はユリです敦さん」
 こうしてユリと敦は共に暮らすこととなった。
 今まで疎かにしていた食生活もユリのおかげかまともなものになった。
 敦が仕事へ行っている間はユリが家事をしていた。
 「敦さん!」
 「っはい、何でしょうユリさん」
 「どうして冷蔵庫の中に何も入っていないんですか!!」
 「えーっと、それは…その」
 「全くもうっ!」
 「今から買いに行きますよ!!」
 「はいっ!」
 一緒に暮らし始めた初日、ユリから敦に雷が落ちた。
 外に出かけて周りから見ればただの中のいい夫婦。
 それも妻に尻に敷かれた旦那の図だ。
 「ふう、いっぱい買いましたね」
 「うん、そうだね」
 「敦さん、今日から私がご飯を作って差し上げますからもうズボラな生活とは、おさらば、ですよ!」
 「うん分かったよ、ユリ」
 敦がそう答えるとユリは満足そうに頷いた。
 ユリが来てからというもの会社でも敦は変わっていた。
 「花田さん最近健康そうですよね。顔色もいいですし何かありました?」
 「いや、別に…」
 「そう言えば花田さんこの前見かけましたよ、可愛くて不思議な髪の色をした女性と歩いてましたよね」
 「花田君にもとうとう春が訪れたんだね」
 上司、同僚、後輩から声をかけられるようになった。
 すると一人の社員が敦に近づいてきた。
 「あ、あの!今度ご飯…一緒に行きません…か?あの、奢るんで」
 敦の後輩にあたる上田伊織。
 彼女は会社のビルの受付嬢で、何かと敦を気にかけていた。
 「え、うんいいけど。奢らなくてもいいよ?」
 敦の返答に驚く伊織。
 「えっ!いいんですか?その…彼女とか」
 「あー…そうだね。じゃあ、聞いてからにするよ」
 「はいっ!」
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