彼女は突然、僕の前に現れた。
 それは虚しくただただ時間だけが過ぎて行った。
 「上田さん」
 「あ、花田さんおはようございます」
 「うん、おはよう。後で話があるんだけどいいかな?」
 「はい大丈夫です」
 「ありがとう、それじゃ」
 敦は会社に着くと受付にいた伊織に声をかけて自分の部署に向かった。
 伊織を茶化す伊織の先輩の声が聞こえたが聞こえないふりをした。
 「花田さん」
 「あ、上田さん。わざわざごめんね」
 「いいえ大丈夫です。それで何の用でしょうか?」
 「ああ、うん。あのね…」
 敦は伊織に聞く。
 「ご飯の話なんだけど、いつがいいかなって」
 「え!いいんですか!?…てっきり行けないものだと…」
 「いや、許可もらったよ。折角誘ってくれたし断るわけにはいかないしね」
 敦は笑って見せる。
 「えっと…では、今週の金曜日でどうですか?」
 「うん、大丈夫。ありがとう。急にごめんね」
 「いっいえ!大丈夫です!それでは…!」
 伊織は敦に頭を下げて足早に去って行った。
 「ははっ、可愛いな…あっ!」
 無意識に出てしまった言葉に恥ずかしくなり口をおさえる。
 「僕は何を…」
 敦は落ちるいてからデスクに戻った。
 家に帰りユリに伝える。
 「今週の金曜日、外で食べてくるね」
 「はい、分かりました。あの敦さん」
 「ん?何、ユリ」
 ユリは言おうか迷ったが結局…何でもないと言って眉を下げて笑った。
 「…今日は先に休みますね。おやすみなさい」
 「あ、うん。おやすみ」
 敦はユリに違和感を覚えた。
 ユリは床に敷いてある布団に横になって丸まる。
 「どうして、こんなにも苦しいのでしょう…」
 ユリは敦が他の女の子と並んで歩いている景色を想像した。
 自然と涙が流れてきて悲しくなった。
 だけどどうして涙が流れてくるのか、胸が痛く苦しくなるのかユリには分からなかった。
 敦はユリに元気がないことを気にかけていた。
 「はあ…」
 「どうしたんですか?花田さん」
 「上田さん」
 「元気ないですね」
 「そんなこと、ないとも言えないんだよね。はあ…」
 敦は今日何回目か分からないため息をつく。
 「わ、私で良ければ相談に乗りますよ」
 「…じゃあちょっといいかな?」
 「はい!」
 敦は少し考えてから言い、伊織は笑顔で返した。
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