私を、好きでいてくれた人
傷みと…
ある日の仕事帰り、いつもの駅前の噴水前のベンチに、私は鞄の中身を広げていた。
「あれっ、ないないっ、鍵がないよー」
私はアパートの部屋のカギが見つからず探していた。
ふと、頭上に影が落ちたことに気づき、顔を上げる。
「なにやってんだよ?早瀬っ」
「あ…小林くん…」
恥ずかしい所を見られてしまった。
「お…遅かったね?残業?」
「いや、残業って程じゃ…多分電車一本違いだろ?」
「あーそうなんだ?」
「そうじゃなくて…それ、なにしてんの?」
「えっ…と、これはー…」
私の表情を見てなのか、小林くんはため息をついて口を開いた。
「なに、探してんの?」
「えー…と…鍵です」
「部屋の?」
「うん」
「いつもは?鞄の中?」
「そうだよ、鞄の中か、ポケットの中!」