私を、好きでいてくれた人
そして、土曜日。
駅前に着くと、ベンチにはまだ小林くんの姿はなかった。
「まだ、10分前だった…」
気づいたら早く出ていた自分に気づき、いつもの噴水前のベンチに座る。
「なんで、ちょっと早めとかに来てるの私…こんなの…デートみたいじゃん」
そう思ったら、胸がトクントクンと脈を打ってきた。
え…なにこれ?
私は胸に手を当てる。
これじゃ、まるで私ー…
「早瀬?」
その声に私はハッとして、すぐ隣に立っていた小林くんを見上げる。
「……小林くん」
「どうした?具合でも悪いのか?」
「えっ!?」
私は胸に当てていた手を下ろし、立ち上がった。
「違うっ、なんでもないのっ、はは…」
「…そう?ならいいんだけど、早いな?」
「えっ…?そー…なの、少し早く家出ちゃって、ほら天気もいいし」
「ぷっ…なんだそれっ」
小林くんはそう言うと、顔全体でクシャと笑っていた。
「……っ」
思わず見ていると、小林くんが私の視線に気づく。
「…ん?なに?」
「あっ…ううん、ただ笑顔って変わらないんだなって思って」
「あー…顔が変わってないからな、そんなもんだろ?年とっただけで」
「えー…なにその解釈…」
「だって本当じゃん、っていうか行こうぜ?」
「あ…うんっ」