私を、好きでいてくれた人
そしてその日の夜、時間が遅いことは分かっていた。
けど、俺の足は勝手に早瀬のアパートに向かっていた。
携帯電話を見ると、時計は10:32分。
メールのアプリを開こうとして、俺は携帯の画面を閉じてポケットに入れた。
そして、迷惑なのを承知で早瀬の部屋の呼び鈴を鳴らす。
ピンポーン
すると、少し間をおいてスピーカーから声が聞こえた。
「…はい?」
「早瀬、俺…」
「えっ…もしかして、小林くん!?」
「うん、こんな時間に悪い…」
「ちょ…ちょっと待って?今開けるよ」
そう言うと、一旦スピーカーの声が途切れる。
少しして足音が近づいて来る音が聞こえて、俺の心臓の鼓動も早くなって行く。
そして玄関の扉が開かれた。
「小林くん…?どうしたの?こんな時間に…」
早瀬は部屋着で、すっぴんなのか、少し目を合わせづらそうにしていた。
「突然、連絡もしないでごめんっ」
「ううん…驚いたけど、今日…式だったんだよね?」
「うん…」
早瀬は俺が手に提げている引き出物の袋をチラッと見て、そう言ってきた。