にじいろの向こう側
.
「で、ブロッコリーは?」
「…好き…です。」
「ふーん…じゃあ、エビ。」
「…好きです。」
…何なんだろう。市場調査?社長自ら?
いや、瑞稀様の会社は食品関係ではなかったような。
『罰ゲーム』と称して、いつも薮さんがやっている『給仕』をやり始めた私に一口食べる毎に好き嫌いを聞いて来る瑞稀様。
「あ、じゃあ、ポタージュスープ。」
「……。」
困り果てて俯きながら、サーブする私を少し覗き込むように見上げた。
「いいでしょ?別に。主人がメイドに食の好み位聞いたって。」
それは…別に悪い事では無いと思うけど。
…聞いてどうするんだろうか。
最後に、香りの良いハーブティーを置いたら、少しだけカチャリとスプーンが音を立てた。
「あ~…何かちょっと食い過ぎたかも。」
少し辛そうに椅子にもたれ掛かって、溜息をついていらっしゃるけれど…。
そんなにお腹擦る程食べていないのに。寧ろ、『大丈夫?』と思う程少ない。
そんな姿を斜め後ろからジッとみていたら、不意に瑞稀様が少し顔だけ振り返る。
その煌めきの多い瞳が一瞬揺れた気がした。
私の顔色を伺ってる様に見えるその表情。
何…だろう。
「あのさ…。」
瑞稀様が口を再び開いたら
「失礼致します。瑞稀様、そろそろお時間でございます。」
丁度圭介さんがダイニングの入り口に立って、丁寧に少し会釈した。
「ああ、もうそんな時間?そっか、結構ゆっくり食ってたんだね。」
瑞稀様が立ち上がるとガタンと椅子が音を立てる。
「ごちそうさま、美味かった。」
そう言って私の頭をポンッと撫でる瑞稀様はもういつもの瑞稀様で。
…私が勝手にそんな風に思っただけだったのかな。
ダイニングから出て行く瑞稀様の背中を会釈しながら見送ってたら、その一歩後をついて行く圭介さんが少し振り返って、ニコッと微笑んだ。
.
「悪かったね、給仕代わりにやってもらって。瑞稀様、今出掛けたよ。」
後片付けをしてキッチンへと戻った所に圭介さんがやって来た。
「明日、お休みだったよね、咲月ちゃん。」
「はい。一日お休みを頂いてます。」
…何だろう。
「あの、もしお休みをずらした方が良いならば…。」
「あ、ごめん!そう言う事じゃなくてさ。
明日…休みだし出掛けるのかな~?って思っただけ。」
「あ…はい。その…ちょっと所用で出掛けようかと。」
「そっか。うん、まあ、気をつけて行って来て?」
少しだけ目を細めた圭介さんは「あ~疲れたなあ…」と伸びをしながら去って行く。
…もしかして、給仕をさせてしまったからと気を使ってここまで世間話をしに来てくれたのかな。
圭介さんならあり得る話だよね。
相変わらず細やかだな、気遣いが。
私も見習わなきゃ。
瑞稀様がお帰りになった時に「居心地良い」と思える様なお屋敷にする為にもっと努力しないと。
シンクに入れたお皿に手を伸ばしたら脳裏を過ったさっきの表情。
『あのさ…』
…瑞稀様、何を仰ろうとしていたのだろう。
私にそう見えただけで勘違いなのかもしれないけれど、どうしても引っかかるな…あの、寂しげな私の顔色を伺う様な表情が。
気分を変えようって首を傾げたら涼太さんがつけてくれた、髪にある花が少しカサリと音を立てた。
そう言えば私、よく頭を撫でられてるな、瑞稀様に。
昔のご主人様もよく頭を撫でてくれていたっけ…。
ご主人様ってそう言うものなのかな?
お仕えするのが二軒目だから良くわからないけれど。
『咲月ちゃん、手ぇつなご!』
…智樹さんはまたちょっと別かな。
幼なじみのお兄さんみたいになっていたし
生まれて、間もなくから一緒にあのお屋敷で育ったんだもんね。
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「で、ブロッコリーは?」
「…好き…です。」
「ふーん…じゃあ、エビ。」
「…好きです。」
…何なんだろう。市場調査?社長自ら?
いや、瑞稀様の会社は食品関係ではなかったような。
『罰ゲーム』と称して、いつも薮さんがやっている『給仕』をやり始めた私に一口食べる毎に好き嫌いを聞いて来る瑞稀様。
「あ、じゃあ、ポタージュスープ。」
「……。」
困り果てて俯きながら、サーブする私を少し覗き込むように見上げた。
「いいでしょ?別に。主人がメイドに食の好み位聞いたって。」
それは…別に悪い事では無いと思うけど。
…聞いてどうするんだろうか。
最後に、香りの良いハーブティーを置いたら、少しだけカチャリとスプーンが音を立てた。
「あ~…何かちょっと食い過ぎたかも。」
少し辛そうに椅子にもたれ掛かって、溜息をついていらっしゃるけれど…。
そんなにお腹擦る程食べていないのに。寧ろ、『大丈夫?』と思う程少ない。
そんな姿を斜め後ろからジッとみていたら、不意に瑞稀様が少し顔だけ振り返る。
その煌めきの多い瞳が一瞬揺れた気がした。
私の顔色を伺ってる様に見えるその表情。
何…だろう。
「あのさ…。」
瑞稀様が口を再び開いたら
「失礼致します。瑞稀様、そろそろお時間でございます。」
丁度圭介さんがダイニングの入り口に立って、丁寧に少し会釈した。
「ああ、もうそんな時間?そっか、結構ゆっくり食ってたんだね。」
瑞稀様が立ち上がるとガタンと椅子が音を立てる。
「ごちそうさま、美味かった。」
そう言って私の頭をポンッと撫でる瑞稀様はもういつもの瑞稀様で。
…私が勝手にそんな風に思っただけだったのかな。
ダイニングから出て行く瑞稀様の背中を会釈しながら見送ってたら、その一歩後をついて行く圭介さんが少し振り返って、ニコッと微笑んだ。
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「悪かったね、給仕代わりにやってもらって。瑞稀様、今出掛けたよ。」
後片付けをしてキッチンへと戻った所に圭介さんがやって来た。
「明日、お休みだったよね、咲月ちゃん。」
「はい。一日お休みを頂いてます。」
…何だろう。
「あの、もしお休みをずらした方が良いならば…。」
「あ、ごめん!そう言う事じゃなくてさ。
明日…休みだし出掛けるのかな~?って思っただけ。」
「あ…はい。その…ちょっと所用で出掛けようかと。」
「そっか。うん、まあ、気をつけて行って来て?」
少しだけ目を細めた圭介さんは「あ~疲れたなあ…」と伸びをしながら去って行く。
…もしかして、給仕をさせてしまったからと気を使ってここまで世間話をしに来てくれたのかな。
圭介さんならあり得る話だよね。
相変わらず細やかだな、気遣いが。
私も見習わなきゃ。
瑞稀様がお帰りになった時に「居心地良い」と思える様なお屋敷にする為にもっと努力しないと。
シンクに入れたお皿に手を伸ばしたら脳裏を過ったさっきの表情。
『あのさ…』
…瑞稀様、何を仰ろうとしていたのだろう。
私にそう見えただけで勘違いなのかもしれないけれど、どうしても引っかかるな…あの、寂しげな私の顔色を伺う様な表情が。
気分を変えようって首を傾げたら涼太さんがつけてくれた、髪にある花が少しカサリと音を立てた。
そう言えば私、よく頭を撫でられてるな、瑞稀様に。
昔のご主人様もよく頭を撫でてくれていたっけ…。
ご主人様ってそう言うものなのかな?
お仕えするのが二軒目だから良くわからないけれど。
『咲月ちゃん、手ぇつなご!』
…智樹さんはまたちょっと別かな。
幼なじみのお兄さんみたいになっていたし
生まれて、間もなくから一緒にあのお屋敷で育ったんだもんね。
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