にじいろの向こう側
◇
花の苗の買い付けを終えて戻って来た温室。裏手から昔懐かしい匂いが漂って来た。
「…珍しいじゃん。つか、禁煙だよ?ここは。」
「あ~…硬い事言わないでよ、涼太。」
久しぶりに見たな…圭介がタバコ吸ってる姿。
隣に座ったら、自嘲気味に眉下げて笑う圭介。
「俺さ…心のどっかで、甘えてたんだよね、多分。『伊東さんはなんだかんだ、分かってくれる』って。」
悲しみを纏うその言葉が煙と共に空へと浮かんで消えていく。
「…でも、あの人はあくまでも『執事』だった。」
プカプカと浮かぶ煙に瑞稀と咲月の笑い合う顔が浮かんだ。
「圭介、俺にも1本頂戴」
貰ったタバコの煙をフーって吐き出したら、それも空に向かって消えていく。
「うまっ」
「な。大学卒業と共に禁煙だから、何年ぶりだよって感じ。」
暫く二人して灰色に染まる空に向かって煙をはき出していた。
ほんと、どん位ぶりだろう…こんな気が抜けた様な時を過ごすのって。
「…もう、ここにいるのも意味ねえかもな。」
呟いた俺の言葉に、寂しそうに「…だね」と笑う圭介さんの口からまた煙が立ち昇った。
後は、瑞稀次第…かな。
そしてもう一人。
「真人さんに連絡ってとってんの?」
「や、あいつ、また音信不通になりやがった。」
「そっか~。どこ行ってんだろうね。」
再び二人で見上げた空にあいつの笑顔。
『涼太、瑞稀の事よろしくね?』
真人…早くしろ。
俺らはもう、とっくに準備出来てる。
「…うわっ!何これ!火事かと思ったじゃん!煙っ!」
………はっ?
「ええっ?!ま…ぐえっ!」
「ただいま、圭介!」
ま、真人?!
長い腕、細いけど広い背中…そして、圭介が息出来ない程、加減無しのバカ力で抱き締めるその姿。
「お前、何でいるんだよ!」
「えーっだって、涼太が『まだなの?早く戻って来いよ』なんてラブレターを…。」
「っ!か、書いてねえ!」
「…書いたんだ、涼太。」
腕を解かれ息苦しそうにしてる圭介が俺に眉を下げたら、憂鬱な曇り空を吹き飛ばす様に、真人の陽気な笑い声が当たりに響き渡った。
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花の苗の買い付けを終えて戻って来た温室。裏手から昔懐かしい匂いが漂って来た。
「…珍しいじゃん。つか、禁煙だよ?ここは。」
「あ~…硬い事言わないでよ、涼太。」
久しぶりに見たな…圭介がタバコ吸ってる姿。
隣に座ったら、自嘲気味に眉下げて笑う圭介。
「俺さ…心のどっかで、甘えてたんだよね、多分。『伊東さんはなんだかんだ、分かってくれる』って。」
悲しみを纏うその言葉が煙と共に空へと浮かんで消えていく。
「…でも、あの人はあくまでも『執事』だった。」
プカプカと浮かぶ煙に瑞稀と咲月の笑い合う顔が浮かんだ。
「圭介、俺にも1本頂戴」
貰ったタバコの煙をフーって吐き出したら、それも空に向かって消えていく。
「うまっ」
「な。大学卒業と共に禁煙だから、何年ぶりだよって感じ。」
暫く二人して灰色に染まる空に向かって煙をはき出していた。
ほんと、どん位ぶりだろう…こんな気が抜けた様な時を過ごすのって。
「…もう、ここにいるのも意味ねえかもな。」
呟いた俺の言葉に、寂しそうに「…だね」と笑う圭介さんの口からまた煙が立ち昇った。
後は、瑞稀次第…かな。
そしてもう一人。
「真人さんに連絡ってとってんの?」
「や、あいつ、また音信不通になりやがった。」
「そっか~。どこ行ってんだろうね。」
再び二人で見上げた空にあいつの笑顔。
『涼太、瑞稀の事よろしくね?』
真人…早くしろ。
俺らはもう、とっくに準備出来てる。
「…うわっ!何これ!火事かと思ったじゃん!煙っ!」
………はっ?
「ええっ?!ま…ぐえっ!」
「ただいま、圭介!」
ま、真人?!
長い腕、細いけど広い背中…そして、圭介が息出来ない程、加減無しのバカ力で抱き締めるその姿。
「お前、何でいるんだよ!」
「えーっだって、涼太が『まだなの?早く戻って来いよ』なんてラブレターを…。」
「っ!か、書いてねえ!」
「…書いたんだ、涼太。」
腕を解かれ息苦しそうにしてる圭介が俺に眉を下げたら、憂鬱な曇り空を吹き飛ばす様に、真人の陽気な笑い声が当たりに響き渡った。
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