にじいろの向こう側
◇
マコの話に首を傾げた俺にちょっと苦笑いした涼太。
「ねえ、真人、それって、NZで話してた、『瑞稀、を守るため』ってやつ?」
「うん。それそれ。」
それにニカッてまた白い歯を見せて笑うマコ。
「涼太、知ってたの?」
「や、俺も全然詳しい事は教えてもらってないんだけどさ。NZで再会した時、取っ捕まえて聞いたの。何で旅になんか出たんだって」
「いや~…あん時の涼太は相当恐かったよね!超睨まれた!」
「や、普通に真面目に見てただけだけど。」
二人でじゃれ合い初めたから、俺が軌道修正。
「で?涼太はこの人から何を聞いたの?」
「ただ『瑞稀、を守りたいから』って。それだけだよ。」
俺を…守る?
や、だったらさ…側に居て欲しかったって話なんだけど、そこは。
「とりあえず、詳しく話してみて?」と促したら今度はマコが苦笑いした。
「俺さ、あの日…あのパーティーの日、瑞稀を俺の部屋に送ってった後、小夜ちゃんと二人で話したの。
で、『ごめんなさい。私本当は真人さんが好きなの』って泣かれてさ…。
や、さすがにそれはないでしょって逆に妙に冷静になっちゃって。」
「何で?マコと小夜だって、結構仲良かっただろ?」
「瑞稀の居る前ではね。」
「は?」
「小夜ちゃん、瑞稀を独り占めしたくて、俺に結構な嫌がらせしてたんだよ?裏で。」
そう…だったんだ…。
「だからもちろん、言ったよ?本人にも『それはありえないでしょ』って。
そしたら…『違うの』って繰り返し言って泣くだけでさ。ラチがあかないって面倒くさくなっちゃって。
じゃあ、とにかく、瑞稀の『結婚しない宣言』と小夜ちゃんの体裁を俺が守るから、小夜ちゃんはこれ以上、瑞稀を苦しめないでやってよ?って言ったの。」
「…それで頭下げたの?あんな嘘まで付いて?」
「うん!だって、それが一番手っ取り早いと思ったから!」
すげーな、この人。
後先考えなさ過ぎだろ。
「そしたらさー。小夜ちゃん、『嬉しい!真人さん、私と結婚してくださるんですか?』って盛上がっちゃって、超ビビった!」
そりゃそうだろうよ。話の流れからして。
「で、あんまりにも喜ぶからさ…何とかしないとなあって思って、咄嗟に閃いたんだよ。
『そうだ!旅に出よう!』って。
で、小夜ちゃんに『じゃあ、小夜ちゃんがこれ以上、瑞稀を苦しめず、瑞稀の心が落ち着いて、尚かつ、俺のタイミングを小夜ちゃんが待てたら、結婚する』って言ってみた。」
…いますっごい思ったんだけどさ。
最新の辞書引いたら、マコと、“思い立ったが吉日”って言葉、同意語として乗ってんじゃないの?
驚愕なんだけど、そのひらめきと行動力。
「それでもいいって言われたらどうするんだよ…。実際に小夜が待っていたかもしれないし。」
「え~。でも言わなかったし。小夜ちゃん、旅人の嫁なんて興味ないんじゃない?
それに、結局瑞稀を苦しめてるし。ついでに可愛い、咲月ちゃんも!」
まあ…結果論はそうかもしれないけどさ。
あと、咲月を苦しめていたところを怒るのは良いけど、『可愛い』は余計。
「まあ…どっちにしても、世界の様子を見る必要があったしさ、“あの事”で。だからいい機会かもって思って!」
「そんなの、“あの事”を行動に移してからやりゃいいだろ…。」
「ダメダメ!世界中をじっくり見るのって結構時間がかかるんだよ?」
「ああ、それは俺も思う。真人のやり方はある意味正解だったって。」
涼太まで味方につけちゃってさ…どれだけNZで濃い同居してたんだよ、二人は。
少しだけムッとした俺にマコがニカッて笑う。
「瑞稀~!何?今、ヤキモチ妬いた?俺と涼太がニュージーランドで一緒に暮らしてたから?」
「はっ?!妬かないわ!つか、まだ話終わってないでしょーが。くっつくな!」
マコはひゃひゃって笑いながらまた「ほら、戻れよ」と涼太に俺から引きはがされて、ソファに戻る。
「この前帰って来たのは何となく虫の知らせでさ。
案の定、小夜ちゃんの影は無くて、咲月ちゃんが居た。」
「…試したの?咲月を。」
「う~ん、どうだろう。小夜ちゃんとはだいぶタイプが違うな~って思ったし、話した感じで、『瑞稀が大好き』っていうのも凄い醸し出してたから、あんまりそう言う疑いはなかったかな~咲月ちゃんは。
ただ、『すっごい可愛い!』って思ったけど。」
…だから、思わなくていいって、『可愛い』は。
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マコの話に首を傾げた俺にちょっと苦笑いした涼太。
「ねえ、真人、それって、NZで話してた、『瑞稀、を守るため』ってやつ?」
「うん。それそれ。」
それにニカッてまた白い歯を見せて笑うマコ。
「涼太、知ってたの?」
「や、俺も全然詳しい事は教えてもらってないんだけどさ。NZで再会した時、取っ捕まえて聞いたの。何で旅になんか出たんだって」
「いや~…あん時の涼太は相当恐かったよね!超睨まれた!」
「や、普通に真面目に見てただけだけど。」
二人でじゃれ合い初めたから、俺が軌道修正。
「で?涼太はこの人から何を聞いたの?」
「ただ『瑞稀、を守りたいから』って。それだけだよ。」
俺を…守る?
や、だったらさ…側に居て欲しかったって話なんだけど、そこは。
「とりあえず、詳しく話してみて?」と促したら今度はマコが苦笑いした。
「俺さ、あの日…あのパーティーの日、瑞稀を俺の部屋に送ってった後、小夜ちゃんと二人で話したの。
で、『ごめんなさい。私本当は真人さんが好きなの』って泣かれてさ…。
や、さすがにそれはないでしょって逆に妙に冷静になっちゃって。」
「何で?マコと小夜だって、結構仲良かっただろ?」
「瑞稀の居る前ではね。」
「は?」
「小夜ちゃん、瑞稀を独り占めしたくて、俺に結構な嫌がらせしてたんだよ?裏で。」
そう…だったんだ…。
「だからもちろん、言ったよ?本人にも『それはありえないでしょ』って。
そしたら…『違うの』って繰り返し言って泣くだけでさ。ラチがあかないって面倒くさくなっちゃって。
じゃあ、とにかく、瑞稀の『結婚しない宣言』と小夜ちゃんの体裁を俺が守るから、小夜ちゃんはこれ以上、瑞稀を苦しめないでやってよ?って言ったの。」
「…それで頭下げたの?あんな嘘まで付いて?」
「うん!だって、それが一番手っ取り早いと思ったから!」
すげーな、この人。
後先考えなさ過ぎだろ。
「そしたらさー。小夜ちゃん、『嬉しい!真人さん、私と結婚してくださるんですか?』って盛上がっちゃって、超ビビった!」
そりゃそうだろうよ。話の流れからして。
「で、あんまりにも喜ぶからさ…何とかしないとなあって思って、咄嗟に閃いたんだよ。
『そうだ!旅に出よう!』って。
で、小夜ちゃんに『じゃあ、小夜ちゃんがこれ以上、瑞稀を苦しめず、瑞稀の心が落ち着いて、尚かつ、俺のタイミングを小夜ちゃんが待てたら、結婚する』って言ってみた。」
…いますっごい思ったんだけどさ。
最新の辞書引いたら、マコと、“思い立ったが吉日”って言葉、同意語として乗ってんじゃないの?
驚愕なんだけど、そのひらめきと行動力。
「それでもいいって言われたらどうするんだよ…。実際に小夜が待っていたかもしれないし。」
「え~。でも言わなかったし。小夜ちゃん、旅人の嫁なんて興味ないんじゃない?
それに、結局瑞稀を苦しめてるし。ついでに可愛い、咲月ちゃんも!」
まあ…結果論はそうかもしれないけどさ。
あと、咲月を苦しめていたところを怒るのは良いけど、『可愛い』は余計。
「まあ…どっちにしても、世界の様子を見る必要があったしさ、“あの事”で。だからいい機会かもって思って!」
「そんなの、“あの事”を行動に移してからやりゃいいだろ…。」
「ダメダメ!世界中をじっくり見るのって結構時間がかかるんだよ?」
「ああ、それは俺も思う。真人のやり方はある意味正解だったって。」
涼太まで味方につけちゃってさ…どれだけNZで濃い同居してたんだよ、二人は。
少しだけムッとした俺にマコがニカッて笑う。
「瑞稀~!何?今、ヤキモチ妬いた?俺と涼太がニュージーランドで一緒に暮らしてたから?」
「はっ?!妬かないわ!つか、まだ話終わってないでしょーが。くっつくな!」
マコはひゃひゃって笑いながらまた「ほら、戻れよ」と涼太に俺から引きはがされて、ソファに戻る。
「この前帰って来たのは何となく虫の知らせでさ。
案の定、小夜ちゃんの影は無くて、咲月ちゃんが居た。」
「…試したの?咲月を。」
「う~ん、どうだろう。小夜ちゃんとはだいぶタイプが違うな~って思ったし、話した感じで、『瑞稀が大好き』っていうのも凄い醸し出してたから、あんまりそう言う疑いはなかったかな~咲月ちゃんは。
ただ、『すっごい可愛い!』って思ったけど。」
…だから、思わなくていいって、『可愛い』は。
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