にじいろの向こう側





マコの話に首を傾げた俺にちょっと苦笑いした涼太。


「ねえ、真人、それって、NZで話してた、『瑞稀、を守るため』ってやつ?」

「うん。それそれ。」


それにニカッてまた白い歯を見せて笑うマコ。


「涼太、知ってたの?」

「や、俺も全然詳しい事は教えてもらってないんだけどさ。NZで再会した時、取っ捕まえて聞いたの。何で旅になんか出たんだって」

「いや~…あん時の涼太は相当恐かったよね!超睨まれた!」

「や、普通に真面目に見てただけだけど。」


二人でじゃれ合い初めたから、俺が軌道修正。


「で?涼太はこの人から何を聞いたの?」

「ただ『瑞稀、を守りたいから』って。それだけだよ。」


俺を…守る?
や、だったらさ…側に居て欲しかったって話なんだけど、そこは。


「とりあえず、詳しく話してみて?」と促したら今度はマコが苦笑いした。


「俺さ、あの日…あのパーティーの日、瑞稀を俺の部屋に送ってった後、小夜ちゃんと二人で話したの。
で、『ごめんなさい。私本当は真人さんが好きなの』って泣かれてさ…。
や、さすがにそれはないでしょって逆に妙に冷静になっちゃって。」

「何で?マコと小夜だって、結構仲良かっただろ?」

「瑞稀の居る前ではね。」

「は?」

「小夜ちゃん、瑞稀を独り占めしたくて、俺に結構な嫌がらせしてたんだよ?裏で。」


そう…だったんだ…。


「だからもちろん、言ったよ?本人にも『それはありえないでしょ』って。
そしたら…『違うの』って繰り返し言って泣くだけでさ。ラチがあかないって面倒くさくなっちゃって。
じゃあ、とにかく、瑞稀の『結婚しない宣言』と小夜ちゃんの体裁を俺が守るから、小夜ちゃんはこれ以上、瑞稀を苦しめないでやってよ?って言ったの。」

「…それで頭下げたの?あんな嘘まで付いて?」

「うん!だって、それが一番手っ取り早いと思ったから!」


すげーな、この人。
後先考えなさ過ぎだろ。


「そしたらさー。小夜ちゃん、『嬉しい!真人さん、私と結婚してくださるんですか?』って盛上がっちゃって、超ビビった!」


そりゃそうだろうよ。話の流れからして。


「で、あんまりにも喜ぶからさ…何とかしないとなあって思って、咄嗟に閃いたんだよ。
『そうだ!旅に出よう!』って。
で、小夜ちゃんに『じゃあ、小夜ちゃんがこれ以上、瑞稀を苦しめず、瑞稀の心が落ち着いて、尚かつ、俺のタイミングを小夜ちゃんが待てたら、結婚する』って言ってみた。」


…いますっごい思ったんだけどさ。
最新の辞書引いたら、マコと、“思い立ったが吉日”って言葉、同意語として乗ってんじゃないの?

驚愕なんだけど、そのひらめきと行動力。


「それでもいいって言われたらどうするんだよ…。実際に小夜が待っていたかもしれないし。」

「え~。でも言わなかったし。小夜ちゃん、旅人の嫁なんて興味ないんじゃない?
それに、結局瑞稀を苦しめてるし。ついでに可愛い、咲月ちゃんも!」


まあ…結果論はそうかもしれないけどさ。
あと、咲月を苦しめていたところを怒るのは良いけど、『可愛い』は余計。


「まあ…どっちにしても、世界の様子を見る必要があったしさ、“あの事”で。だからいい機会かもって思って!」

「そんなの、“あの事”を行動に移してからやりゃいいだろ…。」

「ダメダメ!世界中をじっくり見るのって結構時間がかかるんだよ?」

「ああ、それは俺も思う。真人のやり方はある意味正解だったって。」


涼太まで味方につけちゃってさ…どれだけNZで濃い同居してたんだよ、二人は。


少しだけムッとした俺にマコがニカッて笑う。


「瑞稀~!何?今、ヤキモチ妬いた?俺と涼太がニュージーランドで一緒に暮らしてたから?」

「はっ?!妬かないわ!つか、まだ話終わってないでしょーが。くっつくな!」


マコはひゃひゃって笑いながらまた「ほら、戻れよ」と涼太に俺から引きはがされて、ソファに戻る。


「この前帰って来たのは何となく虫の知らせでさ。
案の定、小夜ちゃんの影は無くて、咲月ちゃんが居た。」

「…試したの?咲月を。」

「う~ん、どうだろう。小夜ちゃんとはだいぶタイプが違うな~って思ったし、話した感じで、『瑞稀が大好き』っていうのも凄い醸し出してたから、あんまりそう言う疑いはなかったかな~咲月ちゃんは。
ただ、『すっごい可愛い!』って思ったけど。」


…だから、思わなくていいって、『可愛い』は。




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