にじいろの向こう側
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「…あのさ、再会はその位にして、泊まるとこどうするか決めねーと。もう結構夕方だし。」
痺れを切らしたのか、涼太さんがニヤリと笑いながらこっちに振り返る。
「だね。どっか宿とんねーとだな~。」
涼太さんに促されて、圭介さんがスマホで時間を確認する。
「俺、あんま金無いよ。」
「そっか、瑞稀はほぼ無一文だ。」
「誰かさんに全財産費やしちゃったからね」
そ、そうなんだ…
で、でも社長だったわけだし…。
「すごいよね~父さんも母さんも。『出て行くなら、谷村って名前使わずに自分で稼いだ金以外は置いてけ』ってさ。」
「崖からライオン突き落とす的な、ね」
…さすがは谷村家。
だけど、社長として働いてた時の瑞稀様の功績は一体どこへ…。
「まあ、俺も貰う気はなかったけどね。」
瑞稀様が納得されてるならいいか。
「圭介さんと俺は住み込みしてたおかげで、ほぼ給料手つかずだったしね。真人も世界各地で色んなバイトしてたから、結構金持ってたし。」
「智樹に至っては、絵が世界的にヒットし過ぎて、億万長者」
「んでも、ほぼほぼ使えてねーぞ、金。画材道具とか買いまくろうって思ってたのに…。」
「だよね!俺、会った時、超ビビったもん!佐野っち、変な人に追っかけ回されてて。」
真人様が面白そうにひゃひゃひゃって笑ってる。
……けど、『佐野っち』。
「えっと…。」
「ああ、ごめん、咲月さん、この人、全部すっ飛ばして話すからワケ分かんないよね。」
瑞稀様が面白そうに口元を隠した。
「マコ、咲月が出てく直前にアジア方面に出掛けてったでしょ?」
「は、はい…。」
「あの時さ、行った先で会おうって決めてた友人が智樹さんだったらしくて。」
「ずっと前に旅先で会っただけだったから、佐野っちが『智樹』って名前だって知らなかったの、俺。」
「…連絡先交換しといて名前聞かないってさ。」
飽きれる様に笑った涼太さんに少し口を尖らせる真人様。
「だって、『名前は?』って聞いたら『佐野です』って返って来たから。そっか、佐野っちね!ってなるでしょ?」
…うん、なるかも、真人様なら。
「今回、何か妙に会いたくなって、連絡したら『アジア方面にいる』って返事が来てさ。
で、会いに行ったら…何か絡まれて逃げてた。」
「か、絡ま…。」
「や、ごめん、絡んでたのは俺の知り合いの探偵とその仲間。
俺達は俺達で、智樹を連れ戻そうって探偵に依頼してたから。」
圭介さんがハハッて笑ったら、今度は智樹さんがそれに口を尖らせた。
「あいつら、こえーんだよ…。オーラがさ…そりゃ逃げるだろ。」
「だよね!やっぱり本物の探偵は迫力違う!俺が思いきって話しかけたら、一番顔が濃い人、すんごい不機嫌そうに睨んだし。」
「いや~真人さん、ファインプレーだよね、マジで。
俺の知人も『あの人が居なかったから、頑なに話を聞いてくれなかったかも』って言ってたし。」
「おー!圭介に褒められた!」
そっか…。
1年前、圭介さんが言ってた『驚愕なミラクル』ってそれだったんだ。
「絵がもう少し早くヒットしてればな~咲月ちゃんは…「それはありえませんよ。」
瑞稀様が智樹さんに言葉を被せたら、圭介さんがまた眉を下げた。
「まあ、そんなわけで。
話が長くなっちゃったけど、咲月ちゃん、瑞稀だけアパート止めてやってくんねーかな。俺らは宿を紹介してもらえると助かります。」
「は、はい…それは構いませんけど…。」
薄い布団を畳にひくだけなんだよね…。
瑞稀様、寝られるかな、あんな硬い所で。
心配で瑞稀様を見たら「よろしくね?」と瑞稀様に微笑まれた。
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「…あのさ、再会はその位にして、泊まるとこどうするか決めねーと。もう結構夕方だし。」
痺れを切らしたのか、涼太さんがニヤリと笑いながらこっちに振り返る。
「だね。どっか宿とんねーとだな~。」
涼太さんに促されて、圭介さんがスマホで時間を確認する。
「俺、あんま金無いよ。」
「そっか、瑞稀はほぼ無一文だ。」
「誰かさんに全財産費やしちゃったからね」
そ、そうなんだ…
で、でも社長だったわけだし…。
「すごいよね~父さんも母さんも。『出て行くなら、谷村って名前使わずに自分で稼いだ金以外は置いてけ』ってさ。」
「崖からライオン突き落とす的な、ね」
…さすがは谷村家。
だけど、社長として働いてた時の瑞稀様の功績は一体どこへ…。
「まあ、俺も貰う気はなかったけどね。」
瑞稀様が納得されてるならいいか。
「圭介さんと俺は住み込みしてたおかげで、ほぼ給料手つかずだったしね。真人も世界各地で色んなバイトしてたから、結構金持ってたし。」
「智樹に至っては、絵が世界的にヒットし過ぎて、億万長者」
「んでも、ほぼほぼ使えてねーぞ、金。画材道具とか買いまくろうって思ってたのに…。」
「だよね!俺、会った時、超ビビったもん!佐野っち、変な人に追っかけ回されてて。」
真人様が面白そうにひゃひゃひゃって笑ってる。
……けど、『佐野っち』。
「えっと…。」
「ああ、ごめん、咲月さん、この人、全部すっ飛ばして話すからワケ分かんないよね。」
瑞稀様が面白そうに口元を隠した。
「マコ、咲月が出てく直前にアジア方面に出掛けてったでしょ?」
「は、はい…。」
「あの時さ、行った先で会おうって決めてた友人が智樹さんだったらしくて。」
「ずっと前に旅先で会っただけだったから、佐野っちが『智樹』って名前だって知らなかったの、俺。」
「…連絡先交換しといて名前聞かないってさ。」
飽きれる様に笑った涼太さんに少し口を尖らせる真人様。
「だって、『名前は?』って聞いたら『佐野です』って返って来たから。そっか、佐野っちね!ってなるでしょ?」
…うん、なるかも、真人様なら。
「今回、何か妙に会いたくなって、連絡したら『アジア方面にいる』って返事が来てさ。
で、会いに行ったら…何か絡まれて逃げてた。」
「か、絡ま…。」
「や、ごめん、絡んでたのは俺の知り合いの探偵とその仲間。
俺達は俺達で、智樹を連れ戻そうって探偵に依頼してたから。」
圭介さんがハハッて笑ったら、今度は智樹さんがそれに口を尖らせた。
「あいつら、こえーんだよ…。オーラがさ…そりゃ逃げるだろ。」
「だよね!やっぱり本物の探偵は迫力違う!俺が思いきって話しかけたら、一番顔が濃い人、すんごい不機嫌そうに睨んだし。」
「いや~真人さん、ファインプレーだよね、マジで。
俺の知人も『あの人が居なかったから、頑なに話を聞いてくれなかったかも』って言ってたし。」
「おー!圭介に褒められた!」
そっか…。
1年前、圭介さんが言ってた『驚愕なミラクル』ってそれだったんだ。
「絵がもう少し早くヒットしてればな~咲月ちゃんは…「それはありえませんよ。」
瑞稀様が智樹さんに言葉を被せたら、圭介さんがまた眉を下げた。
「まあ、そんなわけで。
話が長くなっちゃったけど、咲月ちゃん、瑞稀だけアパート止めてやってくんねーかな。俺らは宿を紹介してもらえると助かります。」
「は、はい…それは構いませんけど…。」
薄い布団を畳にひくだけなんだよね…。
瑞稀様、寝られるかな、あんな硬い所で。
心配で瑞稀様を見たら「よろしくね?」と瑞稀様に微笑まれた。
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