にじいろの向こう側




瑞稀様と繋がった二度目の夜は、信じられない位幸せで温かくて、何度も、何度も涙がこぼれ落ちたけど。

それすら全部掬い取って「好きだよ」と微笑んでくれた瑞稀様。



…何だか夢の中でふわふわと浮かんでいる様な感覚だな。


シフトの関係でいつもより少しだけ遅い朝
洗濯物をカゴに入れて、干場へ向かう途中顔を上げたら、真っ青な冬の空が遠くまで続いてた。

フウと吐き出した息が白く舞い上がる。
頬を刺すような寒さも、その爽やかな気持ちと朝に取り込まれてなんだか幸せ。


やっぱり“あれ”はお渡ししよう…。日頃の感謝を込めて。


そう決心したところで、ポケットに入れているスマホが揺れた。


『おはよう。瑞稀様、もうすぐお出掛けになる時間だから、よろしくね』


…圭介さんからだ。


思わず頬が緩んだ。


どこから見つけて来たのだろうか、この瑞稀様そっくりのスタンプ。


パンパンと音をたてて、干した洗濯物は、何だか気持ちまでピシッとしてくれる気がして、今日も一日、頑張ろうと気合いが入る。


同時に、トクンと心音が心地良く跳ね出した。


ネクタイ…また結べるんだね。


洗濯物を全て干したら、一度、部屋に戻って椅子の上に置きっぱなしになってた紙袋を手にする。


本当は明日渡したかったけれど…今日明日はお忙しいとおっしゃっていたし。
勢いも大事だよね、こういう時は。


ギュッと胸元で抱きかかえた紙袋。
鼓動がドキドキと高鳴る中、足早に瑞稀様のお部屋へと向かった。



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