にじいろの向こう側
◇◇
春の陽気を知らせる様な、良く晴れた三月下旬。
勝手口から少し歩いたところに、4人並んでお屋敷を囲む高い塀を見上げる影があった。
そこに現れた、猫背がちの男性二人。
「ちょっと聞いてよ。おじさん、マル対に見つかったんですけど。どうなの、探偵として。」
「可愛いかったぞ。」
「や…可愛い云々はいいとして、それさ、洒落んなんなくない?あ~!俺、説明しなきゃなんないじゃん!依頼者に。」
一人だけきちんとスーツを身に纏った男性が眉を下げて苦笑い。
「頼んだ、相棒」
それを一言で片付ける、猫背がちの男性の一人。
「ねえ!どんな感じだったの?」
一番背の高いスラッとした男性が黒めがちな目を輝かせた。
「ん~…メイド服がよく似合ってた」
「あ、それは俺も思った。まさにメイドって感じでね。」
キャップを被っている男性がそれを外して少し伸びをする。
「ふ~ん、誰かさんとは大違い…。」
それを受けて、力強い眼差しを有した男性が、隣に居た唯一の女性の頭をポンって撫でた。
「……。」
それに何も言わず睨み返すその女性。
「大丈夫だよ!俺はメイド服姿が微妙でも全然気にしない!」
スラッとした男性が明るくそう言ったら
「出た、フォローになってない、優しさ。」
スーツの男性がまた苦笑い。
「俺は踵落としする女子のがメイドより好きだぞ。」
「おじさん、そのフォローもどうかと…。」
キャップを被り直した男性も苦笑いをしたら
ドコッ!
少しだけ辺りに響く鈍い音。
それと共に、お腹をおさえながら少し屈んで「ぐっ」って一瞬声を出す眼差しの強い男性。
「いきなり腹に拳入れんな!」
「ごめん、ハエが止まってたから」
女性がニッコリ笑いかけたら、ムキになる。
「はあっ?!お前ふざけんな!」
「うるさい!」
「あ、怒られた!」
今度はスラッとした男性の笑い声が辺りに響いた。
そんなやりとりをスーツの男性は優しい眼差しで見守ってからゆっくりと口を開いた。
「…じゃあ、依頼主に会って来る。」
他の五人はそれに微笑みと少しの悲しさの表情を返す。
“微笑み”は、依頼主へ会いに行くスーツの男性への信頼の証。
“悲しさ”は…運命に翻弄されていくであろう対象者への思い入れ。
5人とも…そして俺も。
それぞれ背負って来たモノがあるからこその表情だ。
受け止めた方のスーツの男性は、そんな想いを抱いた。
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春の陽気を知らせる様な、良く晴れた三月下旬。
勝手口から少し歩いたところに、4人並んでお屋敷を囲む高い塀を見上げる影があった。
そこに現れた、猫背がちの男性二人。
「ちょっと聞いてよ。おじさん、マル対に見つかったんですけど。どうなの、探偵として。」
「可愛いかったぞ。」
「や…可愛い云々はいいとして、それさ、洒落んなんなくない?あ~!俺、説明しなきゃなんないじゃん!依頼者に。」
一人だけきちんとスーツを身に纏った男性が眉を下げて苦笑い。
「頼んだ、相棒」
それを一言で片付ける、猫背がちの男性の一人。
「ねえ!どんな感じだったの?」
一番背の高いスラッとした男性が黒めがちな目を輝かせた。
「ん~…メイド服がよく似合ってた」
「あ、それは俺も思った。まさにメイドって感じでね。」
キャップを被っている男性がそれを外して少し伸びをする。
「ふ~ん、誰かさんとは大違い…。」
それを受けて、力強い眼差しを有した男性が、隣に居た唯一の女性の頭をポンって撫でた。
「……。」
それに何も言わず睨み返すその女性。
「大丈夫だよ!俺はメイド服姿が微妙でも全然気にしない!」
スラッとした男性が明るくそう言ったら
「出た、フォローになってない、優しさ。」
スーツの男性がまた苦笑い。
「俺は踵落としする女子のがメイドより好きだぞ。」
「おじさん、そのフォローもどうかと…。」
キャップを被り直した男性も苦笑いをしたら
ドコッ!
少しだけ辺りに響く鈍い音。
それと共に、お腹をおさえながら少し屈んで「ぐっ」って一瞬声を出す眼差しの強い男性。
「いきなり腹に拳入れんな!」
「ごめん、ハエが止まってたから」
女性がニッコリ笑いかけたら、ムキになる。
「はあっ?!お前ふざけんな!」
「うるさい!」
「あ、怒られた!」
今度はスラッとした男性の笑い声が辺りに響いた。
そんなやりとりをスーツの男性は優しい眼差しで見守ってからゆっくりと口を開いた。
「…じゃあ、依頼主に会って来る。」
他の五人はそれに微笑みと少しの悲しさの表情を返す。
“微笑み”は、依頼主へ会いに行くスーツの男性への信頼の証。
“悲しさ”は…運命に翻弄されていくであろう対象者への思い入れ。
5人とも…そして俺も。
それぞれ背負って来たモノがあるからこその表情だ。
受け止めた方のスーツの男性は、そんな想いを抱いた。
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