春〜僕の手を、離さないで〜

桜の淡いピンクには、デニムの青は綺麗に映る。だからこの時期はデニムを着ることが多い。

軽く朝ご飯を食べ、メイクもきちんとして家を出る。一歩外に出た瞬間に、春風が私を優しく包んだ。

待ち合わせ場所に向かっている間、周りを見ればたくさんの春の花が顔を覗かせていた。一つ一つが可愛くて、写真を撮りながら歩く。あとで春希くんにも見せよう。

待ち合わせ場所に行くと、春希くんは鳩にパンをあげているところだった。子犬のようにはしゃいで、とても楽しそう。

「春希くん！お待たせ〜」

私が手を振ると、春希くんからパンをもらっていた鳩たちは一斉に大空へと飛び立っていく。でも春希くんはさっきより笑顔だ。

「春香！おはよう、とっても綺麗なんだよ！」

春希くんに自然と手をつなぐ。そして二人で歩き始めた。ふわりと桜の花びらが舞っていくのが見えてくる。

「綺麗なものは、全部春香と見たいんだ」

春希くんがそう笑う先には、美しい桜並木があった。春のほんの一瞬しか見られない光景に、私は目を細める。そして、思うんだ。生きていてよかった。勇気を出してこの街に戻ってきてよかったって……。