お兄ちゃんへ
外は薄暗くなっていた。

そろそろ家が見えてきたところで、門前にお兄ちゃんが立っているのが見えた。

「まこと!」


お兄ちゃんも私を見つけると、なぜか心配そうな顔で駆け寄ってきた。



「どうしたの?」


「どうしたじゃないよ。家中探してもどこにもいないしさ、電話しても出ないし、心配するよ」



お兄ちゃんの声は低くて、体中に響き渡る。


息を切らして、八の字眉毛で言ってくる。



過保護だなぁ。子供じゃないんだから。

私もう16歳だよ?

来月17になるっていうのに…



嬉しいけど。


特別大事にされてる宝物みたいな気分になるから。



「ごめん。買い物してたの。携帯おいてっちゃったみたい」


バッグの中を探してみたけど携帯が入ってなかった。

自然と買い物袋を持ってくれるお兄ちゃん。

舌を出して笑う私に、安堵したように笑って歩き出す。



「暑かっただろ?買い物なら俺が行ったのに」

「気持ちよさそうに寝てたから!」

「…申し訳ない!」


背が高いお兄ちゃんは私と並んで話すとき、覗き込むように猫背になる。

あと、笑うと目がなくなる。

何がそんなに楽しいのかってくらい笑い合いながら、私たちは家に戻った。

今度はこの家で、楽しい思い出をたくさん作っていこうね。
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