夏〜お前の横顔、しっかり焼き付けるから〜
見返してやろうとあたしも射撃に挑戦するけど、千夏みたいにうまく商品に当たらない。

「下手だな〜」

「気が散るから黙っててよ!」

あたしがそう言うと、面白そうに千夏は笑いながら「ちゃんと当てたい的をきちんと見るんだよ」と言いながらあたしに触れようとする。しかし、その手はギリギリで止まった。

「やっぱやめ!コツは教えない」

「何それ〜!!」

二人で笑い合うけど、それはきっと友達としてだ。あたしから千夏をあの時振ったくせに、こんなに虚しい気持ちになるんだろう。

他の屋台も見て回り、やがて花火が上がる時間が近づいてくる。

「こっちによく見える場所があるんだ」

千夏に連れられ、あたしは丘の上にやって来た。夏の夜風で草が揺れ、目の前には美しい星空が広がっている。これから、この夜空に花が咲くんだろう。

「花火、楽しみだな。東京では見なかったから」

「お祭りとかなかったのか?」

「行けなかったんだよね。……憧れだけじゃ、どの世界でもやっぱりやっていけないんだね」
< 11 / 15 >

この作品をシェア

pagetop