夏〜お前の横顔、しっかり焼き付けるから〜
二人で並んで立ち、夜空に花火が上がるのを待つ。千夏、いつの間にこんなに背が高くなってたんだろ。中学生まではあたしの方が背が高くて、チビだったのに……。

音を立てて、花火が一つ夜空に上がる。綺麗な赤い花火だ。花が一つ咲いた刹那、次々に大輪が夜空に咲き誇る。一瞬で消えていくそれは、目に焼き付いて離れない。

「綺麗……」

ポツリとあたしが呟くと、隣で千夏も頷いた。今見ている花火は、今まで見た花火の中で一番綺麗に見えて、私の胸を切なく締め付けていく。

「夏未」

真剣な声で千夏が声をかけ、あたしの手に温かい感触がした。千夏が手を握ってくれた。それだけで嬉しくて……。

「俺、同情でお前と付き合ってるわけじゃないから。本気でお前のこと、好きなんだ。本当はもっと色んなことがしたいんだ」

「同情じゃ、ない……?」

前なら、その言葉にすごく戸惑っていたんだろう。でも今は、その言葉をずっと望んでいて……。ああ、あたしってこんなにひどい女だったんだ。
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