夏〜お前の横顔、しっかり焼き付けるから〜
でも、ある日テレビで東京の映像を見て、あたしは一瞬にして都会に憧れた。その煌く世界に行ってみたいと思った。

この島にはないおしゃれなお店が並んでいて、食べたことも見たこともない可愛らしい食べ物がテレビには映っている。都会の女の子たちはみんなスタイルがよくておしゃれで、あたしは東京で働くとその時に決めた。

両親は最初は「無理だろ」と反対していたけど、何度もあたしが言ううちに渋々納得してくれた。それだけで夢に一歩近づいた気がして、満足できた。

「なあ、お前って進路どうするんだよ」

高校三年生の夏、あたしは屋上で千夏に訊かれた。島に一つしかない高校には、当然だけど千夏も一緒。島の子どもたちも一緒。

屋上で、あたしと千夏はジュースを片手にくだらないことを喋ってた。その時に千夏が真剣な顔で訊いてきたんだ。

「あたし、東京の会社で働く!東京にずっと憧れてるから」

あたしがそう笑顔で答えた時、千夏は表情を硬くした。そしてあたしの肩を掴んできた。
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