夏〜お前の横顔、しっかり焼き付けるから〜
「島の人間が外でやってけるわけないだろ?やめとけって!この島にいた方がいいって!」

千夏がなぜそう言うのかがわからなくて、あたしは戸惑う。でも、そんなことを勝手に決めるなと怒りもこみ上げてきた。

「何でそんなこと言うの!?千夏には関係ないじゃん!!あたしの人生なんだよ!!」

「関係あるんだよ!!お前のことが好きだから!!」

そう真っ赤な顔をした千夏に言われた刹那、あたしの時が一瞬止まったような気がした。好き?千夏があたしのことを?

「なあ、東京に行かないでこの島にいてくれ。この島にだって仕事はあるだろ?」

千夏の言葉で、あたしの時間が動き出す。でも誰に何を言われても、あたしの気持ちは揺らがない。

「ごめん、あたしは夢を追いかけたい。それに千夏のことは友達にしか思えないから」

そう言い、あたしは屋上から立ち去る。千夏の顔をこれ以上見ていたくなかった。それから勉強を頑張って、高校卒業後は夢だった東京に旅立った。
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