夏〜お前の横顔、しっかり焼き付けるから〜
テレビで見てずっと憧れていた景色に、あたしは胸を弾ませる。マンションの部屋を借り、おしゃれな服やカフェを見て、あたしの新生活が始まった。

でも、都会はテレビで見たいただけの煌く世界じゃないとすぐに思い知らされた。

勤めることになった会社では、上司のパワハラや先輩からの嫌がらせが絶えなかった。たぶん、あたしが島出身だからだろう。

でも、東京でできた彼氏がいたから頑張れた。そんな彼氏とはすぐに同棲していたんだけど、浮気された挙句に、「相手を妊娠させた。お前とは遊びだった」と言われて呆気なく捨てられた。

仕事も、プライベートも、全てがボロボロになって、目の前にあるビルの立ち並ぶこの景色が息苦しくなった。ずっと夢見ていた煌くこの場所は、あたしを必要としていなかった。むしろ、追い出したがっていた。

そう思い始めたら、もう都会での暮らしはどうでもよくなった。仕事をやめ、マンションを解約してすぐにこの島へ帰ってきた。
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