イケメンの恋愛観察日記

私は後から入ることにして、拓海がお風呂に入っている間に明日のお弁当のおかずの下ごしらえをすることにした。

今日は嘉川とのツーショット写真という萌えアイテムやスーパーの店員さんに嘉川を重ねて見たりする尊い拓海の姿を観察することが出来た。私に対する萌えのご褒美を沢山頂けたな。

これは愛しの尊き彼氏(偽装)に御返しをさせて頂かないとね!

よしっ!名付けて『嘉川への愛の弁当』だぁぁ!

そうと決まれば、海苔の飾り切り作っとこ。ハサミで海苔を切っていると拓海がお風呂から出てきた。

「上がったよ〜。」

「は…ぃ?!ちょっとっ半裸はやめてよ!」

うはぁ〜艶かしいね!拓海は綺麗なシックスのパックさんですねー!背中の筋肉までが綺麗ですねー!

「何だよ、彼氏だろ?しかも未来の旦那だし?」

いや?え?まあ、そういうことも確かに了承しましたし…確かに未来の旦那(偽装)なのも間違いじゃないけど〜。

「分かったよ。拓海の好きにすれば?」

ちょっと睨みながらお風呂上がりのシックスのパック彼氏を見ると、顔を手で覆って天井を向いていた。

何かやべぇとか、ぶつぶつ言ってるけど湯あたりしたのかな?

「拓海、気分悪いの?冷蔵庫にスポーツドリンク入ってるよ。」

拓海はフラフラしながら冷蔵庫を開けるとペットボトルのスポーツドリンクを取り出して飲んでいる。

「明日の朝ごはんは和食にする?洋食?」

拓海はまだ顔を赤くしたまま、どっちでもいい。と言った。

「そうしたらまずは一週間ごとに和食と洋食交互にしてみようか?そのパターンがしっくりこなければ変えればいいし。」

「お、それいいな。ん?海苔…それ何?」

「これはお弁当用だよ、ネタバレになるので全ては見せられないぉ!」

と、言って海苔の飾り切りを覗き込もうとした拓海の前に回り込んだ。

ひょぇ?!湯上がりのしっとりとした前髪が私の顎に当たって上目遣いの拓海の目が私の顔の前にある。

「千夏…。」

「な、何?」

「おでこに海苔がくっついてる。」

「…?!」

恥ずかしい…猛烈に何かを勘違いしたので恥ずかしい。

そうだ、拓海は嘉川LOVEを貫いているはずだ。女子のエロエロしいDVDを見たりするので、男女どちらにもイケる口なんだろうけど…私なんかに欲情する訳がない。

欲情…単語すらも生々しい。妄想するのはやめよう…。

私は飾り切りの海苔を片付けると、お風呂に入ることにした。

そういえば、男の人と初めての同棲(仮)だ。寝起きの不細工な顔や完全スッピンを見られる訳だ。

まあいいか。拓海が私を見ても何も起こる訳じゃないしね。

「ふぃ〜っ。」

お風呂から上がってキッチンに行くと、拓海がリビングでテレビつけたままノートパソコンを弄っていた。テーブルの上には資料?のようなものが置いてある。

結構真剣にパソコンを叩いているので、私は声をかけずにお弁当のおかずの下ごしらえをした。

おかずの下ごしらえが終わり、トイレに行って出てくると拓海はリビングから出てきた所だった。

「お疲れ〜寝るわ、おやすみ。」

「ん、おやすみ拓海。」

何だか拓海がじーっと見詰めてくる。あ、もしかしてスッピンだーとか思ってる?

拓海がスッと手を伸ばしてきたので構えていると、拓海は私の頭を撫でてきた。

ん?何だ?

「おやすみ。」

深夜に極上の笑みを撒き散らして、イケメン彼氏(偽装)は部屋に入って行った。

夜中に心臓に悪いよ。

翌朝

いつもより早目に起きて、お弁当を作った。(嘉川への)愛の籠ったお弁当に仕上がったはずだ。

今日は和食の朝食にしてみた。鱈の西京焼き、もずく酢、大根おろし、味噌汁、漬物三種。

朝食を作っていると朝から爽やかイケメンがダイニングにやって来た。

「おはよう、和食だ!」

「お弁当出来てるよ〜、はい。」

加瀨の一食の食事量も長い付き合いで大体分かるので、細かく聞かなくても分かるのがいいね。

「なぁ…あれ入ってないよな?」

あれ?ああ、あれか。拓海の唯一嫌いな食べ物か。

「パクチーは入ってないよ。」

寧ろお弁当のおかずにパクチー入るなんてエスニック過ぎると思うのは私だけ?

2人で仲良く和食の朝食を頂いて、拓海と一緒に出社するのは頑なに拒否をして、時間差でマンションを出ることにして別々に出社した。

「相笠さんおはよう。」

「おはよう〜川上さん。」

おや?川上さん、今日は素敵な色合いの口紅をお使いだね?今年の秋冬の新色かい?

「相笠さん今日、まだ営業部の栗本さんの領収書がまだ提出されてないから回収に行こうね。」

とそれはそれは嬉しそうに微笑んでいた。

おお〜っそうか!今日再び営業部に突撃出来る訳だね。

野上課長に新色の口紅をプルンと見せることが出来るね。栗本の馬鹿でもたまには役に立つじゃないか!

私は『愛の狩人』を取り出し

秋冬の新色ルージュの唇に乗せて川上さんは今日も野上課長の愛を囁く。尊い

と日記にしたためた。


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