イケメンの恋愛観察日記

朝、起きるとランドリールームで拓海が洗濯をしていた。何時から起きてたんだろう?

「よっ、おはよ。この先の公園まで走ってマンションまで帰って来たら、丁度いい感じの距離を走れたよ。」

朝から走って来たの?すごいね、愛を愁う生き物は。

「そうだ~引っ越しの日、再来週の月曜になったんだけど、ここに業者が入るけど大丈夫?」

んん?壁にかけているカレンダーを見る。再来週は振替休日になっている月曜日か。

「大丈夫だよ。カレンダーに印つけておくね。引っ越し業者さんには駐車場の業者用の大型スペース借りれるように申請しておくから…て伝えてね。」

再来週の月曜日『拓海引っ越し』と前の週の日曜日は『拓海実家訪問』と書き入れておいた。

私が朝食の準備をしていると洗濯物を干して戻って来た、朝からイケメンさんは朝食の準備も手伝ってくれる。

「食材は足りてる?」

「そうだね、週末にまとめ買いに行かないといけないかな~。」

「うん、分かった。土曜日は買い出しに行くか?その時に手土産も選ぶ?」

あっご実家への手土産だね。

「選ぶ、選ぶ~。」

本当気の利くイケメンだね。

お昼休み

高校の時の友達から「元気にしているか?」と連絡が入ってきたので、拓海のことを知らせると、他の友達からも追い討ちでメッセージが大量に来ていた。

改めて拓海の報告会を開催するよとメッセージを送って緑茶を啜っていると、きつねうどんを食べる草野君が視界に入った。

ああ、久々淡い恋心を観察出来るチャンスだね。尊い…それで~草野君が大好きな美和ちゃんはどこだ……え?ええ?

美和ちゃんは…山下さん(ちょっとオタク系)と楽しそうに昼食を食べている?!ええ?どういうこと?

「あっ…相笠さんも気が付いた?人事部の山下さんと営業部の佐原 美和付き合い始めたんですって〜。」

私が見ている視線に気が付いた後輩の市川さんの発した言葉に愕然とした。

「み、美和ちゃん…草野君のこと好きじゃなかった?」

「やっぱりそうだよね?どうしてかな?」

川上さんも初々しい美和ちゃんの片思いに気がついていたらしい。本当だよ…あの尊い恋に何があったの?

暫く、美和ちゃんの恋の行方を皆でコソコソと話しながらお弁当を頂いた。

その日の夜、早速友達に呼び出されたので、拓海に断りを入れてから仕事終わりに飲みに出かけた。

高校からの友達三人に囲まれる。

拓海の事は前からチラチラ話していたので、根掘り葉掘り聞かれるということはなかった。

お見合いを避けたくて拓海に頼んだら、じゃあもう俺と付き合っちゃえば~と言われて同棲しているまでの件を説明すると、友達達は顔を真っ赤にして身悶えていた。

「じゃあ、俺と付き合っちゃう?イケメンに言われたいよ~!」

「写真見せろ!」

写真…?あったような…。急いでスマホのアルバムの写真を検索する。

「会社の旅行で…二年前のぶどう狩りの、あったこれだ。」

あれ?この写真よく見ると、拓海と私のツーショット写真じゃないか。そういえば自撮りをしていたので、手に持ったぶどうをフレーム内に収めようと携帯のレンズの位置ばかり気にしていたけど…。拓海をよく見れば私の肩に手を回しているし、おまけに私の頭に顎乗せてるよ!

「はい…これが加瀨 拓海。同い年。」

女子3人が一斉にスマホの画面を覗き込んだ。

「ひえぇぇ!どこのモデル?!」

「外人なの?目が緑色だよ」

「いいなぁ~私にもイケメン落ちて来ないかな!」

皆の反応が素直でいいね。

「イケメン様なのはそうなんだけど、友達の延長みたいな気楽さがいいんだよね。」

「うらやま!」

まあ、確かに目の保養だけど、私は偽装結婚(予定)なんでね。羨ましがられる要素はこれっぽっちも無い訳ですよ。

自分の恋愛は諦めているとはいえ、やはり少しはトキメキやら胸キュンの恋心を味わうような恋人同士→婚約者→結婚。こういう流れに乗りたかったよね。

今更言っても仕方ないけれど…。何だか泣きそうに…くうっぅ!手に持っていたグラスに入った夏みかんサワーを一気飲みした。

「ふぃ~~!すみませんっカルアミルク下さい!」

「ちょっと、ちーちゃん大丈夫?あんた、お酒強くないでしょ?」

「うん…うん…。」

うっかり友達…南田 小夜に相槌をうった時に首を縦に大きく振ってしまったので、目が回る?クラッときそうになった。

その後、皆の恋の話を聞いたり、何故だか拓海に電話しろーと言われて電話したりして…気が付いたら居酒屋に迎えに来てくれた拓海に手を取られて店から外に出ていた。

「めがまわる…。」

「大丈夫か?」

拓海の肩にもたれて何とか立っている状態だ。ふらつくぜ…。

「やだ~本当すみませ~ん!」

「わざわざありがとうございますぅ!」

「今度は拓海さんも一緒にぃ~。」

皆の数オクターブ高い声がキンキンと遠くの方から響いて聞こえている。

「あれ…もう終わりぃ?」

「もう終わりだよ?それじゃここで失礼します。ホラ千夏、真っ直ぐ歩けよ。」

「うらやま!」

 皆に何か言われてるみたいだけど、手を振られたので振り返して、拓海が引っ張る方向へ歩いて行く。

「どこいくのぉ?」

「車に乗って来てるから、気分は悪くないか?」

「だいじょーぶ。」

繋いだ拓海の手をブンブン振り回すと、拓海が恋人繋ぎに手を繋ぎ直してきた。

「もう外で飲むなよ?」

「どうして~?」

「危なっかしい…。」

「え?」

拓海に聞き返そうとして顔を上げた時、視界が塞がった。あれれ?私、拓海に抱き締められている?

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