イケメンの恋愛観察日記
義家族の観察
緊張する。いよいよ拓海の実家にご挨拶にやって来た。
メイクは派手でないだろうか?この薄い水色のワンピースはOKだろうか?
「拓海、変じゃない?」
「大丈夫だっていつもの仕事のメイクより、盛れてるよ。」
「何だかそれ微妙な褒め方だよ!仕事の時は駄目なのか?それとも今が派手過ぎるのか?」
「はいはい、着いたよ~。」
閑静な住宅街の割と大きな家…大きなワゴン車が停まっている。家族の人数が多いからかな?
一台分空いている所に車を停めて、拓海の後に続いて玄関先に立った。
「ただいま~。」
はーい、と声がして…おおっ!拓海さんに似ているママンが出て来た。美人だね!お義母さんがおフランスとのハーフなんだね。
「いらっしゃいませ、母のマリーユです。」
「初めまして、相笠千夏と申します。これつまらないものですが…。」
お義母さんにハハーッとクッキーのお土産を渡していると、お義父さんと…あの子が三鶴ちゃんかな?がニコニコしながら歩いてきた。三鶴ちゃんは外国人要素は少なめなお顔立ちだね。
「いらっしゃーい。千夏ちゃんだね。上がって上がって。」
「写真の人だ!初めましてっ三鶴です。」
写真の人? んん?と思って拓海を見ると拓海は真っ赤になっていた。
「おい、ミツ余計なこと言うなよっ!」
怪しい…。
「タクにーちゃんお帰り~。」
私達が室内に入ると、高校生くらいの女子が居た…この子が下の妹さん?
「初めまして相笠 千夏です。」
「あ…凛香です。」
ペコン…と頭を下げると凛香ちゃんはササッと2階に上がってしまった。
「高校生だから~あんなもんですよ。ねぇ、ママ。」
「照れちゃってね~ごめんね。」
三鶴ちゃんとママンが今の凛香ちゃんの心情を説明する。凛香ちゃんさ、もしかしてブラコンとかじゃないのかな…ハッ!
これもまた尊き想いの一種じゃないか?!実兄に対する禁断のぉぉ…ガサガサとバックの中を探っていたら、拓海に肩を掴まれた。
「お前また発作が起きてたんじゃないか?落ち着け。」
発作とは何事だっ!尊き生き物達の愛の軌跡を書き綴るのが私の使め…。
「千夏ちゃんケーキ食べるかい?」
「はーい、頂きまーす!」
私の使命はお義父さんから告げられた甘い食べ物の誘惑に負けた。
色々と心配していたけれど加瀨家は心温かく出迎えてくれた。
「でさ~今年中には婚約して来年には式を挙げたいかな~とか考えてて…。」
と拓海が言い出すと、お義父さんとお義母さんは居住まいを正すと
「じゃあ結婚するのね?」
とニコニコしながら聞いてきた。
「はい。」
私と拓海の声が重なって、何故だか三鶴ちゃんが写メを撮っている。どういう状況?
「新居はどうするの?」
ワクワクしているようなマリーユママンに聞かれて拓海が、私に視線を向けてきたので私が代わりに答えた。
「簡単にご説明しますと、私の実母は赤ちゃんの時に死別していまして、父がその後に再婚した方が…今私の母代わりをしてくれています。実はその義母とも父は離婚をしていまして…私は実父とは疎遠ですが、その血のつながらない義母と義兄が私の方の家族のような立場です。両親達の離婚で私の養育や慰謝料やら財産分与やらで揉めたので…私は現在住んでいるマンションを貰い受ける形で落ち着いてます。結構広いマンションなので、拓海さんもこちらに引っ越して来てもらうことになってます。」
「千夏ちゃんマンション持ちすごっ!」
三鶴ちゃんが驚いたような笑顔になっている。
因みにマンションはどこなの?という話になったので結婚もするのに隠すのもな…とマンションの住所を教えた。三鶴ちゃんは〇グルのストリートビューを見たようだ。歓声を上げた。
「やだーめっちゃカッコイイ!千夏ちゃん家、広い?私泊まりに行ってもいい?」
「勿論いいよ~部屋余ってるさ。」
「千夏は余計なこと言うなよ。ミツは来なくていいよっ。」
私はやけに反対する拓海をジロッと睨んだ。
「何が余計よ?いいじゃない~三鶴ちゃん泊まりに来てくれたら嬉しいよ。」
「俺も泊まりたい。」
え?誰だ…と声のした方を見たら……きゃあ‼拓海が紺ブレ着てるっ?!やばっ!
「あれ悠太、部活は?」
この子が弟?ふわ~~拓海が紺のブレザーの制服着ているようにしか見えない!
「今日、練習試合の予定だったんだけど、あっちの学校の都合で試合中止になった。」
悠太君は私にペコンと頭を下げると、三鶴ちゃんの横に座った。マリーユママンがキッチンに向かった。
「悠太とミツ姉が泊まるなら私も行きたい。」
んん?今度は2階に上がっていた凛香ちゃんがリビング入口に立っていた。
「もう、お前ら来るなよっ新婚の邪魔するなっ!」
「まだ新婚じゃないーぃ!」
三鶴ちゃんが茶化してくれたので笑いが起きた。兄弟仲いいね、楽しい~。