イケメンの恋愛観察日記
加瀨家で夜、出前の寿司を取ってくれた。
お酒飲んでないけど幸せ酔い?みたいな精神状態になっていてとても楽しかった。悠太君(高1)と凛香ちゃん(高3の受験生)とも少しだけ仲良くなれたみたい。
お泊りの時に何が食べたい?と高校生2人に聞いたら「焼肉」と返ってきた。何でも上の柊さんと拓海が家を出てから家族内の女子率が高くなった加瀨家では、がっつりメニューの登場が少なくなっているらしい。
「お父さんと女共の胃袋に合わせたメニューばっかでさ~俺はジジイじゃねぇ!」
悠太君、お土産のクッキーを一人で食べていた。まだ食べ盛りだもんね…。お泊りの時は食べ放題メニューにしてあげようかな?
そして夜遅くなる前に、加瀨家の家族皆に見送られて家を出た。
「千夏ちゃん、メッセージ送るから~!」
三鶴ちゃんは良い子だな~。チラチラ話している感じでは彼氏いないっぽいね。いつか三鶴ちゃんの素敵な恋愛物語も聞いてみたいな。
「ちーちゃん、冬休みとかはがっつり泊まりに行きたい。」
なんだか悠太君のうちへのお泊りの熱がすごいね。ハッ…!もしかして悠太君がブラコンでこれこそ実兄に対する禁断のぉ愛なのぉぉ?!
今、拓海さんの目が鋭くなったような気がしたので、ハァハァと鼻息の荒かった息を整えた。玄関先に揃ってお見送りしてくれた加瀨家の皆様に車中から手を振り返した。
「拓海の…ご家族あったかいね。」
「そうか?人数多いし暑苦しいだろ?」
「その暑苦しいのがいいんじゃない…。」
私は幸せを噛み締めていた。拓海は偽装の彼氏だし、そのまま婚約、結婚ときても家族になれるなんて思ってもみなかったけど、私にもあの温かい空間に入れてもらえるのかな。
「拓海の側の温かい場所…私が座らせてもらってもいいのかな…。」
拓海が走らせていた車をギューンと路肩に寄せて停まると、急にシートベルトを外した。何?どうしたの?そして、私の方へ覆いかぶさってきたぁ?!
「た…た…。」
びっくりしすぎて、固まっている私の頬にフニッと柔らかいモノが触れる。
チュ…チュッ。
音をたてて、頬から額…眉間、そして鼻…フニュ…と唇に柔らかい感触が降りてきた。丁度、拓海と呼びかけようとしていたので、開いていた口にニュルとした感触のモノが入り込んできた。
唇が触れてます。舌が私の口に入って来ています。
固まっている私の口内を拓海の舌がスルスルと入っていくと更に奥まで吸い上げてきた。
ジュル…ジュッ…。
流石の私も顔を持ち上げられて、唾液が口内に溢れてきた感触で正気になった。
「んぅ…はぁ…んん?た…うぅ…。」
喋れねぇ!止めろ!と手を振り上げようとしたが拓海に手を抑え込まれてしまった。
拓海に嫌悪感は無い。気の無い異性にこんな接触をされたら、気持ちが悪いと思うはずだ。だが驚きはしたが嫌だ…とは思わない。
強弱をつけて唇を吸われ舌を合わせていると、体が変な感じになってくる。
「ん…は…。」
ちょっと唇が離れたので、薄っすらと目を開けて拓海を見てみた。
うわっ…エロイ。
半眼で唾液で唇をテカらせた拓海はとんでもなくエロイ色気を出していた。
「お前…分かってんのか?2人っきりの車の中で煽ってくんな。」
腰…腰、腰が抜けそうだ。煽ってないよ…どこに煽りの要素があったんだよ?急にベロチューをかまされた私はどうすればいいんだよっ。あんた偽装彼氏じゃないの?偽装だけどやることはがっつりやりましょう!てことなのか?
拓海はまたシートベルトを締めると、車を発進させた。
気まずい。
なんだこの車内に籠るエロイ空気は…。
今、拓海が触れた唇に触ってみたいけど、触ったら絶対変な声が出る気がする。
私はひたすら俯いてこのエロイ空間の重圧に耐えていた。早くマンションに着いてくれ!
マンションに着いてからも2人共無言だった。喧嘩をしている訳じゃないのに気まずいのは…嫌だ。話しかけるタイミングを失くしている。でもこのままでは明日の月曜日からこんな状態がこれからも続くのかと考えたら…
絶対嫌だ。はっきりと聞けばいい。それで判断しよう。
お風呂に入って行った拓海の動向を気にしつつ、明日のお弁当の仕込みをしていた。
風呂場から拓海が出て来た。そのまま部屋に入って行こうとしたので廊下に走り出ると
「ちょっと待って!」
と拓海に声をかけた。拓海は顔を引きつらせている。私は拓海の前まで歩いて行った。
「ハッキリさせよう。」
「え?」
「ちょっと来て。」
リビングに拓海を誘って、対面に座る。拓海の顔も強張っているけどきっと私の顔も引きつっているはずだ。
「拓海は偽装彼氏…だよね?」
拓海は急に頭を下げた。
「ゴメン!」
何を謝るの?怖いよっ何だよ?