沈黙の歌姫

4階建ての校舎の、立ち入り禁止にされている4階から上に続く階段を登る。


ガチャっ…


扉を開けた先には真っ青な空が広がっていて、


そこにはきっと海音たちが運び込んだであろう教室にあるような机とイス、それとベンチが置かれていた。


柔らかな風が秋の香りを運んでくる


気持ちいい…屋上なんて初めて来た


そのまま海音に促されてベンチに腰掛ける


『ここいいだろ?』


優しい声で問いかけてくる海音に笑顔で頷く。


海音と過ごすようになってまだ3日目だけど、ずっと硬直していた顔の筋肉がほぐれて、笑いやすくなった気がする


『俺さ高いところが好きなんだ』


【どうして?】



『空が近くなるから…』


そう言って上を見上げる海音の瞳の奥には、やっぱりどこか悲しげな色を感じた。


それからは何も話すことなく、2人で空を見上げた。
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