沈黙の歌姫

一瞬のこと過ぎて何が起きたか分からなかったが、

抱きしめられたんだと、3秒後に理解した



『可愛すぎて無理。』


へ?


『髪、めちゃくちゃ似合ってる。誰にも見せたくないぐらい可愛い。』


目に溜まった涙が溢れ出た。


溜まったのは悲しみの涙だったのに、

流れ出たのは安堵の涙だった。

海音の胸の中で、どうにか顔をあげて彼の顔を見上げると


『泣くなよ』

と言いながら、涙を拭ってくれた。

そのまま手は頬に添えられて、


キスされた…






『大好きだよ』




そう耳元で囁いてから、再び唇を奪われた。



息をするタイミングが分からなくて、

ずっと息を止めていた私が限界に達して、

海音の胸をドンドンするまで、



少しだけ大人なキスを交わした。
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