沈黙の歌姫
立ち上がって海音から少し距離をとった。


『結歌??どうしたの?』


目を閉じて、視界を遮り、


大きく息を吸って






ー♪大丈夫。この雨はきっと美しい虹をかける。だから目を背けないで。ー






たったワンフレーズだけど…


でき…た?


目を開けると驚いた顔でこちらを見ている海音。



『結歌…ありがとな。』


うんって言おうとしたけど、もう声は出なかった。




お母さん。きっと伝わったよね。


“当たり前じゃない”


そんな声が聞こえた気がした。



ねえお母さん?

お父さんも自分のせいでお母さんが死んでしまったと思ってるの?


今度は何も聞こえてこない。

少しだけお父さん顔が見たくなった。
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