沈黙の歌姫
すっごく嬉しい。
でも、私は喋れないから…
『喋れないこと気にしてるか?』
えっ?なんで分かったの…。
『図星みてーだな。』
……。
『喋れないことぐらい気にすんな。お前なんでも顔に書いてあるし、スマホだってあるんだし。それに言葉なんてたいして便利なものでもねーよ。』
そう言った彼の目はやっぱりどこか悲しげで、私を引き込んでいく
言葉なんてたいして便利なものでも無い。そんなふうに言えるのはどうしてだろう。
どんな理由であろうとそうやって言える彼を信じてみたいと改めて思った。
どん底だった私の人生。最後に彼に託してみてもいいかもしれない。
『付き合ってくれるか?』
彼の目を見てしっかりと頷く。
これは私の最後の賭けだ。