沈黙の歌姫

『よし。で、スマホ貸してくんね?』


スマホ?まあ見られて困るものなんて何にもないからいいか。


スマホを受け取ると何やら操作してから返された。


『俺の番号とメアド登録しといたから、なんかあったらいつでも連絡して』



全く連絡することは無かったけど唯一登録されていた<お父さん>その下に追加された<西辺 海音>スマホなんて必要なかった私には凄く嬉しかった。



『やっとちゃんと笑ったな』



え…笑ってた?自分の口角が上がっていることにも気づけないくらい笑い方を忘れていたみたいだ。



『笑った方が可愛い。』

かっ…可愛いって…///

『照れた顔はもっと可愛いな』



///

免疫0いや、マイナス?の私にとって“可愛い”って言葉は体温を上げるには十分過ぎた。


スマホで顔を隠した私の頭をわしゃわしゃと撫でてから、テレビ台の引き出しをあさる彼。



『おっあったあった!ほい』


差し出されたのはカードキー


『お前用な』

< 39 / 192 >

この作品をシェア

pagetop