沈黙の歌姫
ー♪大丈夫。この雨はきっと美しい虹をかける。だから目を背けないで。ー
細く消え入りそうな、だけど綺麗で透き通った歌声が聴こえた。
俺はその歌声に引き寄せられるように歩みを進めた。
そこにいたのはミイラと呼ばれている女の子だった。
入学式、悲しげな目をしていると印象的だった子。
全く喋らないという噂を聞いていたが、この歌を歌っているのは、明らかに目の前にいるこの子だ。
緘黙症…そんな言葉が頭によぎる
そのとき、バチッ。
振り返った彼女と目が合う。
やっべ。聴き入りすぎて隠れてなかった。
俺は覚悟を決めて彼女に近づいていった。