沈黙の歌姫
話したくない訳じゃない。だけど、話そうとすると身体が凍ったように動かなくなる。
私がこの病気になったのは母が亡くなってから。
私には幼なじみの男の子がいた。
記憶が無いぐらい小さいときから大の仲良しで、何かあるとすぐに彼を頼っていた。
父に暴力を振るわれるようになって、毎日増えていくあざを気持ち悪がったクラスメイトは、私をいじめ始めた。仲の良かった子も一緒になって。
そんなとき彼は
「俺が守ってやる」
そう言ってくれた。本当に彼は私を守ってくれていた。他の友達はみんな私を裏切って、いじめに加わっていたけど、彼のことだけは信じていた。