沈黙の歌姫

俺は考える間もなく結歌を抱きしめた。


消え入りそうな震えた体を。

消えてしまわないように


『遅くなって悪かった。怖い思いさせた』

俺がもっと早く来てれば、こんな怖い思いをさせることは無かった。

後悔が募る。

もっと、ずっと、そばに居たい。

そう思った。



それからは何か声をかける訳でもなく、ただ抱きしめた。



3分くらい経っただろうか。

すっと結歌が腕から離れる。


その顔は涙で濡れていた。


嬉しかった。結歌が感情をあらわにしてくれたようで。


少し遅れて結歌の服が濡れて下着が透けてしまっていることに気づく。



『これ』

恥ずかしさから文章になってない言葉でパーカーを差し出した。


それを断った結歌はきっと透けてしまっていることに気づいてない。


『透けてるから…。』


結歌その言葉に赤面して、素直にパーカーを着た。

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