沈黙の歌姫
『あれもあいつらか?』
落書きのことをたずねると首をかしげた。
優しいな。あいつらのせいにしてしまえばいいのに。
『そうか。ちょっと待ってろ』
結歌の優しさを無駄にはしたくない。
少し離れたところで一希に電話をかけ、狼義の下っ端の奴らに体育館の落書きを消させるように伝えた。
急いで結歌のもとに戻り
『帰るぞ』
そう言って手を取った。
すると…
手を振り払われた。
拒絶された。そんな気がして悲しかった。
だけど、迷惑をかけたくないそんな表情と、垣間見える誰のことも信じない…そんな悲しい目をみて思い出す。
俺を拒絶しているんじゃない。信じることを恐れているんだ…と。