沈黙の歌姫
『俺が守ってやる。だから、もっと頼れ』
言葉ベタなのは自覚しているが、俺の素直な言葉だった。
それでも結歌には届かない。言葉で想いを伝えるとはとんでもなく難しい事だ。
ペコッとして出ていこうとする結歌。
ここで離しちゃいけない。絶対に。
離れていく結歌の右手を掴み引き寄せ、抱きしめる。その手には力がこもってしまったかもしれない。
『悪ぃ。俺の事、信じてくれねぇか?頼む。』
俺の想いの半分でもいい。伝わって欲しかった。
胸のなかで結歌の頭が縦に動く。
目にはまた涙が溜まっていた。
でもその涙は目に光を集めるように輝いていた。
『泣き虫』
そう言うと不器用な笑顔を向けてきた。
その顔が可愛すぎてまた抱き締める