沈黙の歌姫
朝9時半。
私は昨日の朝まで暮らしていた家に来た。
リビングはいつもより散らかっていたけど、
なんの変わりもない自分の部屋に入ると、たった一晩来なかっただけなのに、なんだか懐かしい気がした。
お父さんが帰ってくる訳ないけど、一応急いで荷物をまとめる。
別にたいして必要なものもないから、暮らすのに必要なものって言っても大きめのキャリーバッグ1つで十分だった。
リビングに戻ると、そこには海音が待っててくれて、なんだかほっとした。
『終わったか?』
コクンと頷く
『よし。じゃあ行くぞ』
あっ、。最後にお母さんのとこ行かなきゃ。
でも、私が心配する必要なんかなくて、彼が私より先にお母さんの仏壇の前で手を合わせた。
『ちゃんと挨拶しとかないとだろ?家の前で待ってるから。終わったらおいで』
そう言って、私の荷物を持って先に家を出ていった。