愛が重くて何が悪い!
「おまっ……ほんと最低」


悠音、自分が重いのめちゃくちゃ気にしてるのに……。


元カレに言われた、“重い”って言葉がずっとトラウマで。
それで、悠音は。
いつまでも前の男の記憶を引きずってて。


忘れちゃえば、いいのに。
忘れちゃえば、俺に染まるのに。



俺はこれからどうするかとか、何も考えずに、ただ悠音を1人にしたくなくて、席を立った。


「は?おまえ、どこ行くの」


拓海の言葉を背中に俺は走り出した。
もう悠音の姿はない。
どこ、行ったんだよ。
……悠音。


……っ、いた。


普段のスピードとは違う、とんでもない速歩き。
普通に歩いてるんじゃ、俺じゃ追いつかない。
走る。


悠音の手を掴んだ。パシッと乾いた音が響く。


「ゆ……花園さん」
「……何?九条くん」


無愛想。俺のことなんて一切見ないで、ただ涙声だけが俺を襲う。


「……こっち来て」
< 72 / 78 >

この作品をシェア

pagetop