触りたい、縛りたい、愛したい 〜例え許されない恋だとしても〜
スタスタと次に奈那が向かった場所……
それは夕刊広げて読んでる親父の元。
「聡志パパ」と奈那はいつもそう呼んでる。
顔を近付け横に並ぶ。
急な展開についていけてない親父はきっと内心焦ってるはず。
嬉しいくせに。
デレデレしてんの丸わかりだぞ?
「こういう時は入ってきてね?」と言われて照れてやがる。
ていうか奈那、くっつき過ぎだから。
「聡志パパ、大好き」
へぇ〜奈那もそういうこと気遣って言うんだぁ…なんて思いながらチラッと見たら一瞬、親父の頬にチュッてしてそれ撮ってる…!!
「あー!!奈那ってば!聡志さんは私のだよぉ〜!」
すかさず涼子さんが入ってくれて助かった。
じゃないと俺、親父にふざけんな!ってあたり散らすとこだったかも。
アハハと笑う奈那の横顔。
夫婦でも撮ってあげてる。
「もう〜ママ妬かないの!嫉妬するとかラブラブじゃ〜ん!本当、2人は理想の夫婦だよ」
さすが2人の仲を取り持っただけはある。
丸く収めるのが上手いよな。
2人に挟まれあっぷあっぷしてる親父の姿が何故か自分とかぶる。
「あ、そうだ!ヒロもおいでよ」
手招きされて行ったらテーブルに立ててタイマーセット。
「久々に撮ろう」と家族写真。
すごい流れでこうなっちゃったけど奈那や涼子さんが笑顔ならそれでいいやと思う。
やっぱ女性が笑ってる家庭って良い。
撮り終えて
「奈那、また今晩夜食作ろうか?」と涼子さん。
「ん〜、今日はもう寝る」
「え、早いね?」
「明日朝早くに図書館行く予定だから」
「そう?あまり無理しないようにね」
「はーい、おやすみなさい」
ソファーに居る俺にもおやすみと言って部屋に戻って行った。
まだテレビ見るフリしてるけど
「奈那ちゃんやっぱN大?」と言った親父たちの会話に耳を立てていた。
結構前から聞いていた。
俺たちの通う進学校は大学までエスカレーター式だ。
なのに受験し直してまで他の大学に通うと言った奈那。
涼子さんと同じ道、看護師を目指している。
一番カリキュラムに先越された環境が整っていて且つどこよりも多く専門看護師、認定看護師を輩出しているのが有名どころのN大だ。
文句なしのエリートコース。
その分厳しいらしいけど。