触りたい、縛りたい、愛したい  〜例え許されない恋だとしても〜




「夕方のことなんだけど……私さ、結構ショックだったみたい」




桜井さんが来てたことだよな?
完全な事故だけどそうじゃないと思われてたわけで。




ん………!?ショック!?




「頭のどこかでヒロはそんなことしないんだって安心してるバカな自分が居て……実際目の当たりにしたらどう受け入れたらいいのかわかんなくなっちゃった」




正座しながら黙って聞く。
目は逸しちゃいけない気がした。




「そりゃ付き合ってたら自然とそうなるよね…?ヒロが選んだ人なら応援しなきゃって……私は……お姉ちゃんだからって」




わかってはいるけど、姉とか弟とか
現実に戻される言葉に俺は嫌気が差していた。
それは奈那も同じなのか…?
思わず聞いてしまいたくなるような綺麗な涙が潤んだ瞳から溢れている。




「あ……ごめん、あれ?何でだろう…」




頬を伝う涙に奈那自身が戸惑いを見せている。
自然と指で拭ってしまうのは家族だからじゃない。
愛する人だから滲み出てしまうものなんだ。




「泣くなよ……どうしていいかわかんなくなる」




俺はその涙を止める方法を知らない。
これ以上優しくしたり踏み込んでしまうとまた困らせるから。
ベットに座る奈那に背を向けた。
床に座り込む。




ごめんな………
俺、ちゃんと学習するから。
もうどんな言葉や態度にも一線引かなきゃならないんだろ?
必死で抑えるから泣きやんでよ。




「……キスしないで」




上擦る声。
やっぱ泣いてる。
ごめん、振り向けない。
どういう意味なのかも頭回らない。
とりあえず従わないでおこう。




「したくなったらするよ……ちゃんと好きな人と。俺だって…経験ないわけじゃない」




精一杯の強がり。
奈那なら見抜いてるだろ…?
今はそっとしといてくれよ。
目も合わさない理由、わかって。




そう強く願ったのに奈那の手が肩に触れ、ベットから降り目の前に膝をつく。
嫌でも視線が重なって動けなくなる。
頬を包まれて……こんなに近くで見つめ合ったら自制心なんて飛んでしまうのに。







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