触りたい、縛りたい、愛したい 〜例え許されない恋だとしても〜
「え、ボール…?」
「うん、たかいところにいっちゃったの」
「ふーん、そうなんだ…」
クソっ…!やっぱ近付こうか?
何話してるのかさっぱりわかんねぇ。
友達も居るからまだ大丈夫だとは思うけど。
コートの袖を小さく摘んでクイクイ引っ張られる。
またしてもこのキラキラ輝かせたお目々。
何だかよくわからないが何か期待されてることだけは勘付いてしまった。
「えっと、ボールだっけ?」
「うん…!きのうえにのぼっちゃったの」
「俺で取れるかな?どこの木?」
「あっちあっち」
パーッと明るい笑顔になって見ず知らずの俺なんかの手を握り嬉しそうに案内してくれる。
奈那に見つからないよう顔を向けないでフードを被る。
「これだよ!」と案内されたのは奈那からだいぶ離れた木。
さっさと終わらせて戻ろう。
……ってオイ、結構登らないと取れないとこにボールあるじゃん。
ちょっと無理かもよ…?
女の子に目を向けると屈託のない笑顔で待ってる。
取れないなんて微塵にも思ってないんだろうな。
でも俺……木登り出来たっけ?
木に触った時点で出来る気がしないんだけど…?
こんなとこで時間くってたら何の為にここまで来たのか意味がなくなっちまう。
よし、腹をくくれ…!
少し離れてダッシュ…!
あれ?木登りにダッシュ必要だっけ?
そんなこと考えてる暇ねぇ…!
とにかく登れ…!
勢いよく登れたものの、思った以上に高くてちょっぴりビビってます。
これ、降りれんのか…?
枝と幹の間にすっぽり挟まってしまってるボール。
取って下に落としてあげたらめちゃくちゃ喜んでる。
「おにいーたん、ありがとう!」
「おお、いーって」
悪いけどどっか行ってくんねぇかな?
降りれないとか恥ずかし過ぎるから。
「あの、すみませんウチの子が…」
何でこのタイミングで親が登場すんだよ。
最初から居れよ。
「あ〜大丈夫っす」とか言いながら必死で平常心保ってる。
「もうこんなとこ挟むなよ〜」なんて顔引きつってる俺。