触りたい、縛りたい、愛したい  〜例え許されない恋だとしても〜
【守りたい】







始業式。




またネクタイ結んでくれる奈那に甘える俺。
何かしら言おうにも言えないでいる親父。
自分も涼子さんにしてもらってる手前ね。




でも前回とは違って向かい合って結んでくれてるんだよな。
もしかして練習してくれた?
ニコニコしながら見てくれてる涼子さんの目は見れないけど。




「よし、出来た。あ、でもヒロ…これで最後だよ?自分でも出来るようにしないとね」




「うん……そのうち」




「卒業するまでに教えてあげるよ」




「うん…」




卒業するまでに……か。
もうすぐそこなんだよな。
3学期なんてあっという間だもんな。




「試験いつだったっけ?」と涼子さんが奈那にオレンジジュースを渡しながら聞いた。




「2月10日」




「発表は一週間後よね」




「そーだよー」




「どう?調子は」と親父も会話に参加。
俺はもくもくと食べてる。




「え、模試の結果A判定だよ?ぶっ倒れない限り大丈夫なんじゃない?」




「奈那、余裕は試験終わってからよ?」




「はーい」




「本当、わかってんのかしら…」




「ママも余裕だったんでしょ?」




「私は死ぬほど勉強したわよ、それこそ1日13時間勉強に費やしてたんだから」




「うわ、それ死ぬ……」って奈那とセリフが被った。
思わず顔を見合わせて吹き出す。




「人の命に関わる仕事をするのよ?生半可な気持ちじゃダメ。看護師の仕事に余裕なんてないの、常に命と背中合わせなんだからね?準備が全てなんだから」




「ママ、それ何百回も聞いたよ?わかった、ちゃんとママの背中追っていくから」




「う、うん……抜かりないようにね」




娘を心配する気持ち……全面に出ちゃってるね。
親父も何気に背中さすってあげてるし。
朝からしんみりモード?




「え、何コレ?朝ドラですか?」




すぐこうやって空気読めない感じを醸し出すのも俺の役目なのかなって。
奈那は笑ってくれるけどそれもあと少しなんだよな。







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