触りたい、縛りたい、愛したい 〜例え許されない恋だとしても〜
最寄り駅に着くまでずっとこんな感じで参った。
近いのは嬉しいけど時と場合による。
“羨ましい…”なんて声はヒシヒシと伝わってきてた。
視線が痛い……さり気なく腕組んでくるし。
ソワソワしながら“いいの?”と目で訴えかける。
だって誰かに見られる可能性大だから。
こんなに明るい時間に堂々と腕組んで地元を歩くのはまだ慣れてない。
「さっきの話なんだけど…」
「う、うん…」
あ、これはもう開き直って続けるのね?
違う話題に持ってっちゃった。
「ヒロが勇気なくて私に話しかけれないかもって言ってた話…」
「うん……」
「私は秒で覆すな…」
「えっ!?」
思わず見入ってしまった。
優しい眼差しを真っ直ぐ向けられて。
「私なら、ヒロを見つけた瞬間…行動を起こしてる。絶対に接点作ってる。絶対に迷ってない…」
「絶対に…!?」
「うん……だってさ、弟ってタガさえなければ普通に落としにかかってるよ、私…」
「えぇっ!?」
「最初のヒロ、私見て固まってたでしょ?全然逸らさなかった……あの瞳に全部持ってかれたの。まぁ、実際は弟だからって自分の気持ちに鍵かけちゃったけどね」
「え、それって……奈那もあの時から同じ気持ちだったってこと!?」
「そうだよ」
「えーーー!!」
「だからどのみち出逢った瞬間アウトなんじゃない?ヒロが奥手ってわかったんならこっちから行くし」
嗚呼……顔覗き込んで悪戯っぽく笑うのナシだよ。
俺だって出逢った時点で即アウト、全部持ってかれてる。
それが同じだったなんて嬉し過ぎる。
「うぅ……奈那が学校でグイグイきてくれる恋愛もしたかったな〜」
「そだね〜放課後制服デートとかね?あ、でもまたひよりちゃんとライバルになってバトルはしんどいな…」
「さ、桜井さんはそんなんじゃないから…っ」