触りたい、縛りたい、愛したい  〜例え許されない恋だとしても〜







「行ってらっしゃい」




セーブはしつつも病院勤務の涼子さんは今日も出社。
「本当、気をつけてね」と心配性の奈那は何回もそう言ってる。
ドアが閉まり行った後。
優しくそっと後ろから抱きしめる。




「大丈夫だよ、毎日命と向き合ってる涼子さんだもん…お腹の命最優先に考えてるって」




「うん……だよね」




そう言う奈那も少なからず命に関しての勉強してるんだもんな。
心配になるのも当たり前か。




「奈那、今日の予定は?」




「え…?特に」




「じゃあデートしよ?」




「デート!?」




「卒業までに出来なかったじゃん」




パッと笑顔になる仕草にキュン…!
行き先なんてどこだっていい。
手を繋いでラブラブ出来たらそれだけで。
ていうより、家に居るとやっぱりしたくなっちゃうから…なんだけど。




急いで支度してくれたわりには完璧なほど仕上がってる。
揺れるピアス、クソ可愛い。
ご近所の目もあるから地元は普通に歩くけど離れてしまえば、言わなくても自然と手を繋いでくれる。
指を絡めて照れ笑いとか。




その辺は軽くだけど認識している。
やっぱ家族、姉弟だって知れ渡ってるから。
そういう目で見られるのはまだちょっと違和感があって堂々と出来るわけでもなかった。




何を言われるのか、
どう見られるのかは理解していたし
それを跳ね返すほどの説得力は持ち合わせていないことも。
未熟だけど、気持ちの面ではちゃんと繫がっているから不安ではないが。
世間はそうじゃないってことも同時に理解出来ていたから。




だから無難にブラコンシスコンを貫き通すだけに至る。
今は、お互いにわかっていればそれだけで良かったんだ。




なんて、聞こえの良い“ 逃げ ”なんだろうか。




「ん〜!美味しい〜!」




でもほら、こんな女子がうじゃうじゃいるようなお店でも奈那となら平気で入れるし、満足げに笑う奈那を見て彼氏気分を存分に味わう。
いつか行きたいって言ってたパンケーキ屋さん。




「俺のも一口食べる?」




「いいの!?」




目をキラキラ輝かせて子供みたいになってる…!
可愛い…!
「あ、私のもあげる」ってあーんしてくるところも。







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