触りたい、縛りたい、愛したい 〜例え許されない恋だとしても〜
「わかった、俺頑張るよ」
家の近くのスーパーに寄って、
カートを押しながら野菜コーナーで奈那が真剣に野菜を選んでる。
何かコレって……新婚さんみたい。
これから2人で夕食作ります、みたいな。
何気に嬉しいぞ、この状況は。
チラホラ見られてるし、夫婦に見えちゃったり何かして…!
そ、俺ら若い夫婦でしょ!?
「奈那、家にマヨネーズ残ってたっけ?」とか何とか言っちゃって…!
オバちゃん達に聞こえるように言っちゃった。
「え?マヨネーズ?」って振り返る奈那がまた可愛い…!
どうだ、俺の嫁です、なんてな。
「あると思うけど、ヒロはたまにマヨラーなとこあるから気をつけてよね」
「は、はい…」
怒られちゃった。
だって何にでも合うじゃん。
マヨネーズ最強説語らせたら止まんねぇぜ?
あ、そう言えば……
「ねぇ?奈那、そもそもつわりって何?」
何気ない一言が近くに居たお客さん全員の視線を奪うことになろうとはこの時想定出来なかった。
振り向いた奈那は「声大きいよ」と注意してきたけど何のこっちゃか。
「あなた、パパになるんならそれくらいわかってないとね?」ってオバちゃんが俺に言ってきた。
え?俺がパパ!?違うし…!!
圧倒されまくるオバちゃんパワー。
一瞬で囲まれたぞ。
「女ばっかりしんどい目に遭うんだから」
「ちゃんと支えてあげるのよ?」
「妊娠出産って命がけなんだから」
「男はわかんないだろうけどものすごく大変なのよ?」
「女はデキた時点で母性が出るけど男は産まれて抱っこして育ててるうちにやっと父性が出るらしいわ」
何かよくわかんないけど大変なのはわかったからちょっと離れて…!
「あなた若いわね、もうパパなの?」
困り果てた俺にようやく奈那の救いの手が。
「あの、彼がパパとかじゃなくて、知り合いの方が妊娠してるんです」
「あら、そうなの?何だ、勘違いしちゃった、ごめんなさいね?」
「いえ、こちらこそご迷惑おかけしました」
唖然……固まる俺を見て吹き出してる。
袋ぶら下げて帰り途中でも、こらえきれずに笑ってばっか。
「アハハ…!ヤバい、ツボった…!」
「笑い過ぎじゃない?」