触りたい、縛りたい、愛したい 〜例え許されない恋だとしても〜
【恋慕う時】
「えっ…!コレが寮…なの!?」
リビングで一家団欒中、これから入る寮のパンフレットを見せてくれた。
「そうだよ?キレイでしょ?」
もうコレ……新築のワンルームじゃん。
俺、寮って言ったらてっきり狭い部屋で二段ベットとかで風呂トイレ共同の相部屋なんだと思ってた。
ちゃんと個室で風呂トイレも分かれてる。
ほぼほぼ一人暮らしじゃん。
2年前に全館リフォーム済みで看護師科は大学のすぐ隣に寮があって完全女子寮。
勉強に専念してもらうべく食堂もあるなんて、朝夕関係なくお世話になれんじゃん。
「これで家賃2万円なんて安いわよね学生寮は。近くで部屋借りたらどんなに安く見積もったとしてもワンルーム8〜9万ってとこだよ、それプラス敷金礼金もだからね」
学生寮は敷金礼金なし。
おまけに掃除も大学側が別で雇ってるみたいだしな。
「でも学生寮の中では一番高い賃料だから……あざっす」
申し訳無さそうに両親に頭を下げる奈那。
「これくらいどうってことないわよ、安心して学業に励める方が親としてもメリットだらけよ?私の時はこんな綺麗な寮じゃなかったのにな〜」
「そうだよ奈那ちゃん、寮生活慣れるまでは何かと大変かも知れないけど頑張ってね?母娘揃って同じ大学、同じ職務に就くって嬉しいことだよな」
やっぱそうなんだ。
同じ道を辿るって親にとっては輝かしい道なら嬉しいってことだよね。
「でも奈那ちゃんのナース服も似合うだろうな〜」
おい、親父。
何勝手に想像してんだよ。
「あら、聡志さん、私の時みたいにワンピースでナースキャップ想像してる?今は違うからね?」
「え?そうなの!?」
「そうだよ、聡志パパ〜今はナースキャップ被らないし動きやすさ重視でズボンがほとんどだしね」
「そうなんだぁ…」
何で親父が肩落としてんだよ。
少し前の俺を見てるみたいじゃねぇか。
奈那も笑いながら「やっぱ似てるね」って言ってくるし。
ああ、そうだよ。
俺もちゃっかりそうだと思ってニヤニヤしてた1人だ。