触りたい、縛りたい、愛したい 〜例え許されない恋だとしても〜
「結婚前提はいつから?」
「それはお互いに子供がいますって話した時かな」
「え、それでダメージはなかったんだ?」
「私はなかったけど当時は聡志さんがどう思うかわかんなくてなかなか言い出せなかったけどね」
だよな……バツイチ子持ちなわけだもん、お互いに。
親父もそこは悩んだんだろうか?
言わないだけで相当悩んだんだろうな。
「言った時の反応は?」
「最初聡志さんから言ってくれて、私も言わなきゃって思ったらいきなりプロポーズだったから頭真っ白になっちゃって」
「グスン……だからなかなか返事もらえなかったんだ……」
子供の前で泣くな〜!
そんなの見せたらこの母娘の思うツボだぞ。
大好物なんだから。
「お互いに吹っ切れてたけど私は前に進むのは怖かった……でもめげずに来てくれた聡志さんに強く惹かれてたのも事実で……」
「で、私が背中押したってわけ…だよね?」
「その節はお世話になりました」と夫婦で頭を下げている。
プッと吹き出したら親父が俺にも言ってきた。
「祐翔もだぞ、すんなり受け入れてくれてありがとな?めちゃくちゃ感謝してるし心強かった」
「べ、別に……」
こんなふうに親父と会話出来るのも涼子さんと奈那が来てくれたからだと心底思う。
荒んで反抗期だった俺の心を撃ち抜いて来たし温もりも与えてもらえた。
親父が笑うの久しぶりに見た。
真正面からぶつからせてくれた。
それも“私はあの2人好きだよ”と言った奈那のストレートな言葉が何もかもクリアにしてくれたんだよな。
素直に表現すること、飾らない言葉選びがクヨクヨ悩んでたこと全てちっぽけに思えるようにさせてくれた。
こんな華奢な身体で、小さな心で……
与えられるものはどれも無限大だったような気がする。
まぁ、すんなり受け入れたのはかなりヨコシマな部分があったけども。
「こうして家族になれたことは俺の一番の幸せだし力になってるんだ」
親父の力強い言葉に皆が笑って頷いている。
「また1人、家族が増えるしね?」と奈那も目を細めて笑ってる。
後に性別は女の子だとわかった。
引越し作業も順調に進み、入寮前の挨拶回りや荷物運びも終了。
入学式も明日に迫った日の夜。