触りたい、縛りたい、愛したい 〜例え許されない恋だとしても〜
俺にとっても奈那にとっても身近な出産なんて初めてで予習はたくさんしたけどいざ迎え入れたら正直頭真っ白になりそう。
周りが出来ることなんてたかが知れてる気がして。
「大丈夫よ、陣痛マックスの時は余裕ないかもだけど一応出産は経験してるしね、無事生まれるまでは何が何でも頑張ってこの小さな命繋いでみせるから」
本人が一番不安抱えてるのに……
本当、母親って強いな。
無性の愛っての?母性?
俺もこんなふうに生んでくれたのかな?
写真でしか会えない母親も
もう面影すらないけど……
黙って立ち去った。
涼子さんに悪い気がして……
でも今は…少しだけ、
母親を思って泣いてもいいかな?
電気もつけないでベットに座り肩を揺らした。
止めどなく溢れ出る思いが拳の上に落ちていく。
堪らなく漏れる嗚咽。
久しぶりに泣けた気がする。
静かに開いたドア。
優しい声が聞こえる。
見られたくなくて思わず背を向けたけど止まらなくて膝を抱えた。
震える肩に温かい手。
「ヒロ……1人にした方がいい?」
うんともすんとも言えないで居たらそっと手が離れた。
格好悪いけどその温もりが消えていくのが嫌ですがりつきたくなった。
思わず手を掴んでみたものの、目は合わせられない。
わかってくれたみたいで隣に腰を下ろしてくれた。
背中をさする手も優しい。
嗚咽が止まらなくて恥ずかしいのにただ傍にいて欲しい……
こんな弱々しい自分見られたくないのに奈那を求めてしまう。
「きっとね、ヒロのお母さんもママと同じような想いでヒロを生んだんだと思うよ?」
え……?なんで……?
俺、まだ何も言ってないのに……
「なんで……わかっちゃうの……?」
「うーん………ずっとヒロのこと見てるから?」
本当いつもお見通し……
それだけ見てくれてるから?
こんなダサい俺を?
両手広げて抱きしめてくれるの?
泣いていいんだよ…って。
その度に一緒に居てあげるって。
「ヒロのお母さんに感謝してもしきれないくらい……ヒロを生んでくれてありがとうございますってちゃんと伝わってるかな…?」
向かい合って真正面から抱きしめ合った。
奈那の肩に涙が染み込んでいく。