触りたい、縛りたい、愛したい  〜例え許されない恋だとしても〜







その3日後。




明け方に破水して陣痛がきた涼子さんを親父と2人で病院へ運ぶ。
勿論、涼子さんが働いている総合病院だ。




奈那にも連絡したらすぐに始発で向かうと電話が切れた。
正直、男2人で情けないくらいアタフタしてる。
まだ微弱陣痛だからって話してたのに少しずつ息が荒くなって痛みが増してきてるみたい。




運転しながら「涼子頑張れ」と励ます親父。
後部座席で何も出来ず、涼子さんの様子を奈那に知らせるだけの俺。




病院に着いて2時間後。




早朝の病院なんて初めてかも。
バタバタと走ってくる足音はすぐに奈那だとわかった。
息を切らして駆けつける姿も絵になるんだよな。




「ママは!?」




手を取り病室に向かう。
入った途端、奈那の瞳に涙が。
って、負けないくらい親父も泣いてるけど。
立ち会いしたもんな。




「母子ともに健康だって」




「ママ…!おめでとう!頑張ったね」




病院着いて30分後に生まれるという超スピード安産でした。
Vサインで「ありがとう」と言う涼子さんは穏やかな顔をしている。




「名前、これで決定だ」




病室で急いで書いた命名紙を俺たちに見せてくれた。
そこに大きく筆で書かれた力強い文字。




“末永家 二女 瑛莉”




瑛莉と書いて読みはひかり。
末永 瑛莉。




「良いじゃん…!」って奈那と丸かぶりしたけど2人で決めた名前だから尚更良い響き。
漢字、最後の最後まで悩んでたよな。




母子同室だからもう少ししたら……




そう思ってた矢先にドアがノックされて着替え終わった赤ちゃんが助産師と共に入って来た。
わ……!俺も初めて直に見る。
小さくて可愛い。




「か、可愛い〜!手動いてる〜!」




ヤバい……ずっと見てられる。
俺たちの、妹。
ようやく会えた。
最初に言っておくけど、めっちゃ年が離れてるからめっちゃ甘やかすと思います。
ダメな兄貴宣言していいですか…?




「聡志パパ抱っこしてよ」




「いや、もうしたし奈那ちゃん抱っこしてやって」




「違う違う、ママと写真撮るから」




「あ、そう?じゃあ……」




涼子さんが命名紙持ってるパターンと逆のパターンそれぞれ撮ってる。
後で家族写真も撮れた。






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