触りたい、縛りたい、愛したい 〜例え許されない恋だとしても〜
奈那が抱っこした時はすかさず俺が撮る。
瑛莉ちゃん見てる奈那の優しい瞳。
これから描く2人の未来もこんな感じなのかな…ってちょっと想像しちゃう。
「お誕生日おめでとう、瑛莉ちゃん」
あ、今のムービーにしとけば良かった。
ヤバい…新生児ヤバいって言ってるの面白い。
「ヒロもこっち来て?一緒に撮ろ…?」
「うん」
「お、撮ってあげるよ」
親父がカメラを向けてくれる。
瑛莉ちゃんを挟んで撮るけど、親父に撮られるとかどんな顔したらいいのかわからない。
ヤベ、引きつったかも。
俺も抱っこしたら緊張したのが伝わったのか泣かれた。
俺も泣きそう。
初めての抱っこで泣かれるとかトラウマじゃん。
「きっと疲れちゃったのよ、撮影会長いから」と涼子さんのフォローも刺さる。
出産当日から4日間入院らしいから退院したら実家に戻るってさ。
今日も講義あるみたいでトンボ帰りだ。
急だったもんね、仕方ない。
送り途中、病院の廊下で白衣を着た年配のおじさんから声を掛けてきた。
「あれ、もしかして奈那ちゃん……?」
「えっ!?堤のおじさん…!じゃなくて、堤教授……ん?病院だから違うか」って自問自答してる奈那にニッコリ笑うおじさん。
「今は指導に回っているから教授で合ってるよ?昔みたいにおじさんって呼ばれるのも懐かしいな」
チラッとこっちを見てきたから会釈したら奈那が紹介してくれた。
「ママが昔からお世話になってる堤教授。えっと、血液内科でしたよね?」
「うん、現役の頃はね?またこっちに戻って来たんだ、そしたら末永が出産って聞いて驚いたよ。彼は、弟さん?確か…再婚したんだったよね」
「あ、はい……そうです。弟の祐翔です」
「どうも…」
「そっかそっか、幸せそうで何よりだ。今から顔見に行こうと思っててさ」
「ママ喜ぶと思います」
「それにしてもいや〜末永もべっぴんだけど奈那ちゃんはもひとつべっぴんさんだな〜ワハハハ!」
「ちょ、声大きいですって堤のおじさん…!」
近くのナースステーションからチラホラ見られて「え、末永主任の娘さん!?」という声が聞こえてきた。
ていうか、続々と集まって来て囲まれる。