触りたい、縛りたい、愛したい 〜例え許されない恋だとしても〜
「そうそう、末永の娘ちゃんだよ〜べっぴんさんでしょ?」とおじさんがドヤ顔してる。
似てるって言われて恥ずかしそうに笑ってるけどナース目指してるって更に暴露されて深々と頭を下げていた。
そうか、奈那にとっては憧れの職業だしその先輩方となれば気の引き締まる思いだよな。
珍しく緊張してる感じ。
「3年後待ってるね〜」
「はい…!頑張ります…!」
病院を出てから駅に向かう途中。
「焦った〜!こんなことならもっとちゃんとメイクしとくんだった〜」
「え、そこ!?ていうかいつもキレイだよ?すっぴんも可愛いけど」
「もう…!」
腕を叩くフリして絡ませてくる。
だ、大丈夫かな!?
まぁ見られても知ってる人は居ないか。
あ、でも病院関係者に見られたらヤバいんじゃ…!?
キョロキョロしてたら指も絡ませてくるんだもん。
ドッキドキだよ…!
「大丈夫だよ〜見られてもシスコンブラコンでしょ?私たち」
ニヤリと笑う口元。
もう慣れっこじゃん。
そして、言わせたい人には言わせておけスタイル。
「貴重なヒロとの時間、無駄にしたくない」ってサラッと言ってのけちゃうから握る手も強くなる。
「そんなこと言われたら帰したくなくなるだろ…」
冗談混じりに言ったのに
「安心して?今夜は寝かせないから」って真顔で返してきた。
プッとお互い吹き出す。
求めているものが同じで結局こうなっちゃうんだ。
敵わないところも変わらない。
「さっき、弟だって紹介したのはまだ聡志パパに打ち明けてないからだよ?私たち以外の口から耳に入るのだけは避けたいじゃない!?だからごめんね?本当だったらあそこでちゃんと恋人ですって紹介したかったんだけど」
わかってる。
俺だって成長してんだよ!?
「もうそんなんで拗ねたりしないって……ちゃんと親父に打ち明けることが第一関門、でしょ?」
「それはそうといつ言おっか?ヒロが大学入ったら…?それまで保つかな!?」
「うん、それは俺も思ってた」
前に一度バレかけた時、今でも本当は気付かれてたんじゃないかってまだ少し疑ってる。
涼子さんが誤魔化してくれたけどいくら親父でもそこまで鈍感じゃないだろうし。