触りたい、縛りたい、愛したい 〜例え許されない恋だとしても〜
「もうバレる前に言っちゃえば?ずっと隠される方が後で尾を引くかもよ?」
そ、そっか……そういうものなのか。
確かに、俺が親父の立場なら……
隠し通されるのは何か嫌だな。
寂しい?ちょっと腹が立つ?
だったら今日にでも言う?
でもどうする?
「ちょうどこの1ヶ月、奈那が居るんだし?帰っちゃったら益々言うタイミング逃しちゃうんじゃない?」
全くその通りだ。
でも俺……まだ何も出来てない。
将来だって決まってない。
そんな不安定な状態で付き合ってるって言っていいものなのか!?
親父だったら何て言う!?
中途半端な報告にならないだろうか。
そっと手が重なる。
見ると、隣で奈那が優しい目をしていた。
「大丈夫、ヒロのタイミングで良いんだよ?ママも別に急かしてるわけじゃないから。ヒロがよし、今日言う!ってなった時に飛んで帰って来るよ」
あ……また、奈那にそこまで言わせてしまう。
本当情けない、俺。
「あら、急かしてるのよ?最初はバレるとやりにくいこともあるのかな〜って思ってたけど、今の2人見てたらもう言っちゃっても良いんじゃないかなって思えてきたの」
そう言えば最初、涼子さんがそう言ってたっけ。
バレる前に先手を打つ……的な?
でも大丈夫かな……
ヤベぇ……モジモジしてしまう。
涼子さんと目が合って……
「あの、言う覚悟は出来てるんです…!その、俺が……俺自身が未完成のままだから……親父はああ見えてちゃんと筋を通してきた人間だから、今の俺じゃ殴られて終わりかなって…」
「そういう聡志さんを好きになったけど殴るのは違うと思うし、第一そんなことしない人だよ?ちゃんと伝えればわかってくれる。私には伝えてくれたじゃない?同じこと言えば良いんだよ」
いや、それは涼子さんだから言えたもので……
相手が親父となると言葉も選ぶというか……
いいや、ちゃんと何回もシュミレーションしたんだ。
親父に何を言われようと自分の気持ちに嘘はないってこと、それを一番に伝えたいから。
気持ちは固まってるのに涼子さんや奈那を見るとカーッと体温が上昇する。
耳まで真っ赤なのが自分でもわかる。
いや……その……嗚呼……と顔を覆う。
絶対ヘタレだと思われてるんだろうな。
ビシッとしなきゃ。